むかしむかし、冬のさなかのことでした。雪が、鳥の羽のように、ヒラヒラと天からふっていましたときに、ひとりの
「どうかして、わたしは、雪のようにからだが白く、血のように赤いうつくしいほっぺたをもち、このこくたんのわくのように黒い
それから、すこしたちまして、女王さまは、ひとりのお
一年以上たちますと、王さまはあとがわりの女王さまをおもらいになりました。その女王さまはうつくしいかたでしたが、たいへんうぬぼれが強く、わがままなかたで、じぶんよりもほかの人がすこしでもうつくしいと、じっとしてはいられないかたでありました。ところが、この女王さまは、まえから一つのふしぎな
「鏡 や、鏡、壁 にかかっている鏡よ。
国じゅうで、だれがいちばんうつくしいか、いっておくれ。」
すると、鏡はいつもこう答えていました。国じゅうで、だれがいちばんうつくしいか、いっておくれ。」
「女王さま、あなたこそ、お国でいちばんうつくしい。」
それをきいて、女王さまはご安心なさるのでした。というのは、この鏡は、うそをいわないということを、女王さまは、よく知っていられたからです。そのうちに、
「鏡や、鏡、壁にかかっている鏡よ。
国じゅうで、だれがいちばんうつくしいか、いっておくれ。」
すると、鏡は答えていいました。国じゅうで、だれがいちばんうつくしいか、いっておくれ。」
「女王 さま、ここでは、あなたがいちばんうつくしい。
けれども、白雪姫 は、千ばいもうつくしい。」
女王さまは、このことをおききになると、びっくりして、ねたましくなって、顔色を黄いろくしたり、青くしたりなさいました。けれども、
さて、それからというものは、女王さまは、白雪姫をごらんになるたびごとに、ひどくいじめるようになりました。そして、ねたみと、こうまんとが、野原の草がいっぱいはびこるように、女王さまの、心の中にだんだんとはびこってきましたので、いまでは夜もひるも、もうじっとしてはいられなくなりました。
そこで、女王さまは、ひとりのかりうどをじぶんのところにおよびになって、こういいつけられました。
「あの子を、森の中につれていっておくれ。わたしは、もうあの子を、二どと見たくないんだから。だが、おまえはあの子をころして、そのしょうこに、あの子の
かりうどは、そのおおせにしたがって、
「ああ、かりうどさん、わたしを助けてちょうだい。そのかわり、わたしは森のおくの方にはいっていって、もう家にはけっしてかえらないから。」
これをきくと、かりうども、お姫さまがあまりにうつくしかったので、かわいそうになってしまって、
「じゃあ、はやくおにげなさい。かわいそうなお子さまだ。」といいました。
「きっと、けものが、すぐでてきて、くいころしてしまうだろう。」と、心のうちで思いましたが、お姫さまをころさないですんだので、胸の上からおもい石でもとれたように、らくな気もちになりました。ちょうどそのとき、イノシシの子が、むこうからとびだしてきましたので、かりうどはそれをころして、その
さて、かわいそうなお姫さまは、大きな森の中で、たったひとりぼっちになってしまって、こわくってたまらず、いろいろな木の葉っぱを見ても、どうしてよいのか、わからないくらいでした。お姫さまは、とにかくかけだして、とがった石の上をとびこえたり、イバラの中をつきぬけたりして、森のおくの方へとすすんでいきました。ところが、けだものはそばをかけすぎますけれども、すこしもお姫さまをきずつけようとはしませんでした。白雪姫は、足のつづくかぎり走りつづけて、とうとうゆうがたになるころに、一
そのへやのまん中には、ひとつの白い
白雪姫は、たいへんおなかがすいて、おまけにのどもかわいていましたから、一つ一つのお
日がくれて、あたりがまっくらになったときに、この小さな家の主人たちがかえってきました。その主人たちというのは、七人の
「だれか、わしのいすに
すると、第二の小人がいいました。
「だれか、わしのお
第三の小人がいいました。
「だれか、わしのパンをちぎった者があるぞ。」
第四の小人がいいました。
「だれか、わしのやさいをたべた者があるぞ。」
第五の小人がいいました。
「だれかわしのフォークを使った者があるぞ。」
第六の
「だれか、わしのナイフで切った者があるぞ。」
第七の小人がいいました。
「だれか、わしのさかずきでのんだ者があるぞ。」
それから、第一の小人が、ほうぼうを見まわしますと、じぶんの
「だれが、わしの寝どこにはいりこんだのだ。」
すると、ほかの
「わしの寝どこにも、だれかがねたぞ。」
けれども、第七ばんめの小人は、じぶんの寝どこへいってみると、その中に、はいってねむっている白雪姫を見つけました。こんどは、第七ばんめの小人が、みんなをよびますと、みんなは、なにがおこったのかと思ってかけよってきて、びっくりして声をたてながら七つのランプを持ってきて白雪姫をてらしました。
「おやおやおやおや、なんて、この子は、きれいなんだろう。」と、
朝になって、白雪姫は目をさまして、七人の小人を見て、おどろきました。けれども、小人たちは、たいへんしんせつにしてくれて、「おまえさんの名まえはなんというのかな。」とたずねました。すると、
「わたしの名まえは、白雪姫というのです。」と、お姫さまは答えました。
「おまえさんは、どうして、わたしたちの
「もしも、おまえさんが、わしたちの家の中のしごとをちゃんと引きうけて、にたきもすれば、おとこものべるし、せんたくも、ぬいものも、あみものも、きちんときれいにする気があれば、わしたちは、おまえさんを
「どうぞ、おねがいします。」と、お姫さまはたのみました。それからは、
白雪姫は、小人の家のしごとを、きちんとやります。小人の方では毎朝、山にはいりこんで、金や
「おまえさんのまま母さんに用心なさいよ。おまえさんが、ここにいることを、すぐ知るにちがいない。だから、だれも、この家の中にいれてはいけないよ。」
こんなことはすこしも知らない女王さまは、かりうどが白雪姫をころしてしまったものだと思って、じぶんが、また第一のうつくしい女になったと安心していましたので、あるとき
「鏡や、鏡、壁 にかかっている鏡よ。
国じゅうで、だれがいちばんうつくしいか、いっておくれ。」
すると、鏡が答えました。国じゅうで、だれがいちばんうつくしいか、いっておくれ。」
「女王 さま、ここでは、あなたがいちばんうつくしい。
けれども、いくつも山こした、
七人の小人の家にいる白雪姫 は、
まだ千ばいもうつくしい。」
これをきいたときの、女王さまのおどろきようといったらありませんでした。この鏡は、けっしてまちがったことをいわない、ということを知っていましたので、かりうどが、じぶんをだましたということも、白雪姫が、まだ生きているということも、みんなわかってしまいました。そこで、どうにかして、白雪姫をころしてしまいたいものだと思いまして、またあたらしく、いろいろと考えはじめました。女王さまは、国じゅうでじぶんがいちばんうつくしい女にならないうちは、ねたましくて、どうしても、安心していられないからでありました。けれども、いくつも山こした、
七人の小人の家にいる
まだ千ばいもうつくしい。」
そこで、女王さまは、おしまいになにか一つの
「よい
白雪姫はなにかと思って、
「こんにちは、おかみさん、なにがあるの。」
「
「この
「おじょうさんには、よくにあうことでしょう。さあ、わたしがひとつよくむすんであげましょう。」と、年よりの
白雪姫は、すこしもうたがう気がありませんから、そのおかみさんの前に立って、あたらしい買いたてのひもでむすばせました。すると、そのばあさんは、すばやく、そのしめひもを白雪姫の首をまきつけて、強くしめましたので、息ができなくなって、死んだようにたおれてしまいました。
「さあ、これで、わたしが、いちばんうつくしい女になったのだ。」といって、まま母はいそいで、でていってしまいました。
それからまもなく、日がくれて、七人の
「その
わるい女王の方では、家にかえってくると、すぐ
「鏡や、鏡、壁 にかかっている鏡よ。
国じゅうで、だれがいちばんうつくしいか、いっておくれ。」
すると、鏡は、国じゅうで、だれがいちばんうつくしいか、いっておくれ。」
「女王さま、ここでは、あなたがいちばんうつくしい。
けれども、いくつも山こした、
七人の小人 の家にいる白雪姫は、
まだ千ばいもうつくしい。」
と、このことを女王さまがきいたときには、からだじゅうのけれども、いくつも山こした、
七人の
まだ千ばいもうつくしい。」
「だが、こんどこそは、おまえを、ほんとうにころしてしまうようなことを
「よい
白雪姫は、中からちょっと顔をだして、
「さあ、あっちにいってちょうだい。だれも、ここにいれないことになっているんですから。」
「でも、見るだけなら、かまわないでしょう。」
おばあさんはそういって、
「では、わたしが、ひとつ、いいぐあいに
かわいそうな白雪姫は、なんの気なしに、おばあさんのいうとおりにさせました。ところが、
「いくら、おまえがきれいでも、こんどこそおしまいだろう。」と、心のまがった女は、きみのわるい笑いを浮かべながら、そこをでていってしまいました。
けれども、ちょうどいいぐあいに、すぐゆうがたになって、七人の
心のねじけた女王さまは、家にかえって、
「鏡や、鏡、壁 にかかっている鏡よ。
国じゅうで、だれがいちばんうつくしいか、いっておくれ。」
すると、鏡は、まえとおなじようにに答えました。国じゅうで、だれがいちばんうつくしいか、いっておくれ。」
「女王さま、ここでは、あなたがいちばんうつくしい。
けれども、いくつも山こした、
七人の小人の家にいる白雪姫は、
まだ千ばいもうつくしい。」
女王さまは、けれども、いくつも山こした、
七人の小人の家にいる白雪姫は、
まだ千ばいもうつくしい。」
「白雪姫のやつ、どうしたって、ころさないではおくものか。たとえ、わたしの命がなくなっても、そうしてやるのだ。」と、大きな声でいいました。それからすぐ、女王さまは、まだだれもはいったことのない、はなれたひみつのへやにいって、そこで、
さて、リンゴが、すっかりできあがりますと、顔を黒くぬって、百
「七人の小人が、いけないといいましたから、わたしは、だれも中にいれるわけにはいきません。」といいました。
「いいえ、はいらなくてもいいんですよ。わたしはね、いまリンゴをすててしまおうかと思っているところなので、おまえさんにも、ひとつあげようかと思ってね。」と、百
「いいえ、わたしはどんなものでも、人からもらってはいけないのよ。」と、白雪姫はことわりました。
「おまえさんは、
そのリンゴは、たいへんじょうずに、こしらえてありまして、赤い方のがわだけに、
「雪のように白く、
「鏡や、鏡、壁 にかかっている鏡よ。
国じゅうで、だれがいちばんうつくしいか、いっておくれ。」
すると、とうとう鏡が答えました。国じゅうで、だれがいちばんうつくしいか、いっておくれ。」
「女王さま、お国でいちばん、あなたがうつくしい。」
これで、女王さまの、ねたみぶかい心も、やっとしずめることができて、ほんとうにおちついた気もちになりました。ゆうがたになって、小人たちは、家にかえってきましたが、さあたいへん、こんども、また白雪姫が、地べたにころがって、たおれているではありませんか。びっくりして、かけよってみれば、もう姫の口からは息一つすらしていません。かわいそうに死んで、もうひえきってしまっているのでした。小人たちは、お姫さまを、高いところにはこんでいって、なにか
小人たちは、白雪姫のからだを、一つの
「まあ見ろよ。これを、あのまっ黒い土の中に、うめることなんかできるものか。」そういって、外から中が見られるガラスの
さて、白雪姫は、ながいながいあいだ
すると、そのうち、ある日のこと、ひとりの
「この
「たとえわたしたちは、世界じゅうのお金を、みんないただいても、こればかりはさしあげられません。」とお答えしました。
「そうだ、これにかわるお礼なんぞあるもんじゃあない。だがわたしは、白雪姫を見ないでは、もう生きていられない。お礼なぞしないから、ただください。わたしの生きているあいだは、白雪姫をうやまい、きっとそまつにはしないから。」
王子が、こんなにまでおっしゃるので、気だてのよい小人たちは、王子の心もちを、気のどくに思って、その棺をさしあげることにしました。王子は、それを、
「おやまあ、わたしは、どこにいるんでしょう。」といいました。それをきいた王子のよろこびはたとえようもありませんでした。
「わたしのそばにいるんですよ。」といって、いままであったことをお話しになって、そのあとから、
「わたしは、あなたが世界じゅうのなにものよりもかわいいのです。さあ、わたしのおとうさんのお
そこで、白雪姫もしょうちして、王子といっしょにお城にいきました。そして、ふたりのごこんれいは、できるだけりっぱに、さかんにいわわれることになりました。
けれども、このおいわいの
「鏡や、鏡、壁 にかかっている鏡よ。
国じゅうで、だれがいちばんうつくしいか、いっておくれ。」
鏡は答えていいました。国じゅうで、だれがいちばんうつくしいか、いっておくれ。」
「女王さま、ここでは、あなたがいちばんうつくしい。
けれども、わかい女王さまは、千ばいもうつくしい。」
これをきいたわるい女王さまは、腹をたてまいことか、のろいのことばをつぎつぎにあびせかけました。そして、気になって気になって、どうしてよいか、わからないくらいでした。女王さまは、はじめのうちは、もうごこんれいのけれども、わかい女王さまは、千ばいもうつくしい。」
けれども、そのときは、もう人々がまえから