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夢をかなえよう


 その機関車は、甘くて香ばしいにおいを吹き出しながら、プラットホームに入ってきた。
「このにおいは…チョコレートだ!」
 僕が言うと、テラおじいちゃんは
「チョコレート機関車だからの」
と、かち割りチョコを満載した炭水車…この場合は「チョコ水車」かな…を指した。
 サンタクロース達は、このチョコ機関車に乗って、良い子のところに行くんだって。
 僕は不思議に思って聞いてみた。
「トナカイのそりじゃないの?」
 だって、絵本やカードに描いてあるサンタって、大体トナカイのそりに乗ってるもの。歌にだってなっているくらいだし。
「良い子の住んでる町の駅前で乗り換えるのさ。トナカイのそりや、サーフボードにね」
 テラおじいちゃんはニッと笑って、波乗りのまねをして見せた。
 ホームでは、たくさんのサンタクロース達が白い袋やきれいな箱を、汽車…じゃなくってチョコ車の引く列車に積み込んでいる。
 みんな、とっても楽しそうだ。
「ねぇおじいちゃん。僕やっぱりサンタになるよ。だってチョコ機関車に乗りたいもの」
 そう言ったら、テラおじいちゃんは急にまじめな顔をした。
「なぁアース。サンタになるのは毎年プレゼントをもらうのよりも難しいぞ。何しろ、百年間『良い子』でいる修行をしなきゃいけないんだ。ワシだってあと五十年間修行をしなきゃならないくらいだからな」
「五十年!」
 僕はあんまり長い時間なのでびっくりした。
 その後、あれっ? と思った。
「おじいちゃんは六十歳だから、『良い子』の修行はあと四十年じゃないの?」
「実はな…十歳の時、おねしょをしてしまって、最初からやり直しになったんじゃ」
 テラおじいちゃんはうんと小さな声で言った。