迷走の【吊られた男《ハングドマン》】 − 大団円 【6】 BACK | INDEX | NEXT 2014/09/26 update |
朝靄の食卓。 「ったく、危なっかしいヤツだぜ、お前は」 しなびたリンゴをかじりながら、ブライトがぼやくように言う。 「油断するから痛い目に遭う。……ま、目の保養にはなったが」 彼は網膜に前日の光景を焼き付けていた。男の形をした若い娘の肢体に、血管の浮いた長大で赤黒い「男の肉体の一部」がまとわりついているその様を思い出し、北叟笑む。 「私はあなたを信頼しているのですよ。あなたが必ず助けてくれると信じているから、油断もできる」 エルの微笑み。 それは大理石の彫刻の物でも白磁の人形のそれとも違う、一人の少女の笑顔だった。 「……その油断を夜中の寝室でもしてくれてりゃぁ、夜這いのし甲斐もあるのにさぁ」 ブライトは、ようやく腫れの引いた左頬と、まだだいぶ腫れている右頬とをさすった。 ------------- Copyright Shinkouj Kawori(Gin_oh Megumi)/OhimesamaClub/ All Rights Reserved 許可無く複製・再配布することは、著作権法で禁じられています |
Copyright Shinkouj Kawori(Gin_oh Megumi)/OhimesamaClub/ All Rights Reserved
このサイト内の文章と画像を許可無く複製・再配布することは、著作権法で禁じられています。