り着いたパトリシアは、安堵とうれしさとで文字通りに舞い上がっていた。
「ご案内頂きありがとうございます」
まるでカーテンコールを受ける踊り子のように、しなやかな礼をし、早々に件のドアの中へ消えていった。
独り廊下に取り残された体のピエトロは、
「先ほど宮殿の中を歩き回ったときは、果てしなく長いと思った廊下が、なぜこんなにも短く感じられるのだろう。せめてもう少しパトリシア姫と話をしていたかったなぁ」
などとため息混じりにつぶやいた。それでも直後には、己の役務を思い出し、
「しまった、急がないとオランからのお客様をお出迎えできなくなる!」
今来た道を振り返った。