舞殿の【女帝(エンプレス)】 − 兵士 【9】

してシンメトリーに造成されている。
 東に宮殿の心臓部であるダンスホールや謁見室があり、西には小さな白い建物があった。
 南と北には客間の窓が並んでいる。
 おそらく、どの位置からも調和がとれた美しい庭園の風景が眺められるように設計されているのだろうことは、おぼろげながらピエトロにも理解できた。
 その中庭で、メイドが言っていたとおり何人かの兵士が集まってなにやら打ち合わせをしている。
 そのうちの1人が不意の侵入者に気づいたらしく、ピエトロに険しい顔を向けた。
 背の高いその衛兵は、若いと言うよりは幼い顔立ちだったが、濁りのないまっすぐな眼光は、気の小さい物を威圧するに十分な威厳を持っている。
「あ、じゃまだったかな?」
 あわてて後ずさる彼に、衛兵は穏やかな口調でかえした。
「何かご用でしょうか?」
「いや、たいしたことじゃないんだけど。その……宮殿の中をちょっと見て回ってたんだ。迷子になってはいけないと思って」
「恐れ入りますが、接待役の方であられますか?」
「うん、そうなんだ……恥ずかしい話だけれど、ちょっと遅刻してきちゃったものだからね」
「左様であられますか」
 衛兵は小さくうなずいてから、他の兵士たちに、
「手に余るようなら職人を呼んでもいいが、できるだけ内々で済ませるんだ。ただし、お客様の迷惑になってはいけない」
 小さな声で指示を出した。
 兵士たちは軽く敬礼をし、四方に散った。


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2014/09/20update

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