てかり顔が二人連れへ向かって躍りかかる。
二人連れも二方向に動いた。ただし、ぴったりと息のあった動きだ。
黒ずくめが後ろへ跳ね退き、フードが前へ踏み込む。
三人ほどの有象無象が手斧やら鎌やらでフードに斬りかかった。フードは避けるという動作をしなかった。
どうも避ける必要はないと判断したらしい。マントの下で左腕がもぞりと動いたかと思うと、次の刹那には有象無象どもの武器が総て弾き飛ばされていた。
マントから突き出た左手には、長廊下の床板を一枚矧がしてきて柄を付けたような物体が掴まれている。それが鞘に収められた長剣だと一目で解る者は、まずいないだろう。
息を吐く暇なく、フードはさらに深く踏み込む。
そして立ち向かってくる者も逃げる者も区別なく、その莫迦長い鉄の塊で殴りつけてゆく。それも泳ぐような、舞うような、華麗な身の軽さで、である。
地べたが失神者で埋まると、フードはひらりと飛んで、一番最初に殴りつけたてかり顔の鼻面に鞘の先を突き付けた。
だらしなく尻餅を突いたそいつは、背後から唐突に、
「その勅書を、こちらへ頂けませんか?」
という柔らかな声がしたのに過剰反応を示し、結果として気を失った。
黒ずくめとフードは顔を見合わせ、殆ど同時に呆れのため息を吐いた。