くなった。
岸上にある家は新築のかわいらしい家ではなくなり、昔ながらの白壁の土蔵やお屋敷に変わっていた。
その家々の間隔もどんどん広くなる。黒い板塀、生け垣、畑、空き地、空き地、なまこ壁、生け垣、畑、空き地……。
足下の石ころはごつごつと尖ったものだけになって、川幅も助走をつければ飛び越えられそうなほど細くなっていた。
どれくらいの時間歩いただろう。
太陽は頭のてっぺんよりは少し西の方に移動しているし、お腹の虫も小さく鳴き声を上げている。
歩き疲れた龍の目の前に、大きな壁と、鉄の柵が現れた。
柵の隙間から覗くと、向こう側はトンネルというか、洞窟のような通路になっている。
奥の方がどうなっているのか、その通路がどれくらいの距離なのかは、真っ暗なのでよくわからない。
透明な川の水が、柵の間から流れ出ている。
「ここが、川の一番最初のところ……?」
鉄の柵にしがみついて、龍は暗がりの奥をじっと見た。
暗闇の中から、水と一緒に冷たい空気も流れ出てくる。
龍の背筋がぶるぶるっと震えた。
通路の奥に、白い綺麗な人の顔が見えたような気がする。
暗い地の底で笑う白い顔。「トラ」の顔をした寅姫の、優しくて悲しい笑顔。
龍はあわてて柵から手を放し、三歩ぐらい後ろへ飛び退いた。