人。龍脈の流れを動かし、この地に水を引きしは、寅姫のたっての望みなれば、我は見返りに姫を所望し、姫はそれに応え、我が妻となりし。さりとて龍脈を押さえるに、我が力常にここにあらねばならぬも、さて我らに棲む社ぞなきし」
自分の口が言っているらしいのに、龍にはその言葉がさっぱり解らなかった。
解らないのは、どうやら足下の男の人も同じようだった。真っ白な顔、真っ青な唇を不安そうに奮わせている。
龍は自分でもどうしたらいいのか解らなかった。だいたい自分の方が、身体がものすごく高いところにあるらしいと言うことが怖くて、泣き叫びたくなっているというのに。
その時。
「男子がこの程度のことで驚いてはなりません」
その声は、龍のすぐ隣から聞こえた。