夏休みの前から夏休みの終わりまでの話。 − 【38】

ずむずは背骨に沿って駆け上り、あっという間に頭のてっぺんに届いた。
 頭のてっぺんの髑髏の丸いところにぶつかったむずむずは、目玉の方に跳ね返って、鼻の奥の方で止まった。
 止まったむずむずはどんどん大きくふくらんだ。ふくらんで、ふくらんで、耐えきれなくなったとき、目玉と鼻の穴から一息に吹き出した。
「俺は、悪い龍だ」
 涙と鼻水と一緒に、喉の奥から声が出た。
「悪い龍は、人の為に尽くそうなどと思わぬモノでありましょう?」
 寅姫の声にも、涙と洟が混じっていた。


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2015/09/26update

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まろやか連載小説 1.41
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