道路に突き当たった向こう側は、地面の下に潜り込む格好になっていて、やはりそれ以上は進めなかった。
龍は、日が暮れるまで、その「行ける範囲」をうろうろと往復し続けた。
この川岸のどこかに「トラ」が居る気がしてならなかった。
あのひょろりと長くて、柔らかい白い影が、どこからかひょこりと現れて、大人びた笑顔を向けてくれる気がしてならない。
そうして現れた「トラ」が、龍の怖くて不思議でわくわくしたあの体験の、どうにもわからない「理由」を、丁寧にかみ砕いて教えてくれるに違いないのだ。
図書袋の中に詰め込んであった『人身御供の代わりの御札』が一枚残らず消えた「理由」も、その図書袋に入れた覚えのない虎目石(らしき石)が入っていた「理由」も、
「ああ、それはこういう意味だよ」
と笑って解説してくれる筈だ。
『そういうふうに「トラ」に説明して欲しいんだ。「トラ」に教えて欲しいんだ』
龍は日が暮れるまで、川岸を行ったり来たりし続けた。何度往復したかわからない。
そして何度往復しても、「トラ」は現れなかった。