夏休みの前から夏休みの終わりまでの話。 − 【41】

た笑顔を彼女に向けて、ちょこっと小首を傾げた。
「そうかな?」
 「トラ」は返事をしなかった。かわりに口元に苦笑いを浮かべた。
「ボク、これから母さんの所に行かないといけないんだ。姫ヶ池に行ったのがばれちゃったみたいだから、謝らないと。ボクは行っちゃいけないことになっているから」
 龍は瞼を痙攣させた。
「それは『トラ』が女の子だから? さっき、寅姫さまの祠を守るのは男の子の仕事って……」
「確かに祠の仕事をするのは男の役目だけれど、女の子が近づいちゃいけないって決まりはない。だけど、ボクはあそこに行っちゃいけない事になってる。少なくとも、ボクの母さんはそう思ってる」
「なんで?」
 龍は興味本位の軽い気持ちで訊いた。
 「トラ」は深刻な重い口調で答えた。
「あそこに、ボクのお墓があるから」


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2015/09/26update

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まろやか連載小説 1.41
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