た笑顔を彼女に向けて、ちょこっと小首を傾げた。
「そうかな?」
「トラ」は返事をしなかった。かわりに口元に苦笑いを浮かべた。
「ボク、これから母さんの所に行かないといけないんだ。姫ヶ池に行ったのがばれちゃったみたいだから、謝らないと。ボクは行っちゃいけないことになっているから」
龍は瞼を痙攣させた。
「それは『トラ』が女の子だから? さっき、寅姫さまの祠を守るのは男の子の仕事って……」
「確かに祠の仕事をするのは男の役目だけれど、女の子が近づいちゃいけないって決まりはない。だけど、ボクはあそこに行っちゃいけない事になってる。少なくとも、ボクの母さんはそう思ってる」
「なんで?」
龍は興味本位の軽い気持ちで訊いた。
「トラ」は深刻な重い口調で答えた。
「あそこに、ボクのお墓があるから」