夏休みの前から夏休みの終わりまでの話。 − 【50】

掌で頭をくしゃくしゃになでられた気分になった。
「左様で」
 寅姫は子供をあやす母親の顔で笑っていた。
「では妾も今一度、妾の外にいる、妾でない妾を諭しに参りましょう。己が動かねば天も動かぬと」
 立ち上がり、低い天井に向かって泳ぎだそうとした寅姫を、龍神は引き留めた。
「流れを止めた阿呆本人が動けばよいことじゃ」
 龍神が立ち上がる。よどんだ水が渦を巻いた。最初はゆっくり、そしてどんどん早く、渦はぐるぐると廻る。
 やがて渦は水の中の竜巻になった。


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2015/10/05update

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まろやか連載小説 1.41
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