掌で頭をくしゃくしゃになでられた気分になった。「左様で」 寅姫は子供をあやす母親の顔で笑っていた。「では妾も今一度、妾の外にいる、妾でない妾を諭しに参りましょう。己が動かねば天も動かぬと」 立ち上がり、低い天井に向かって泳ぎだそうとした寅姫を、龍神は引き留めた。「流れを止めた阿呆本人が動けばよいことじゃ」 龍神が立ち上がる。よどんだ水が渦を巻いた。最初はゆっくり、そしてどんどん早く、渦はぐるぐると廻る。 やがて渦は水の中の竜巻になった。