ジェームス・マシュー・バリー(Sir James Matthew Barrie)
スコットランド生まれのイギリスの劇作家・小説家・童話作家・ファンタジー作家である。

ケンジントン公園のピーターパン

原題:PETER PAN IN KENSINGTON GARDENS
作家名:ジェームス・マシュー・バリー(Sir James Matthew Barrie)
挿絵:アーサー・ラッカム(Arthur Rackham)
訳者名:katokt

高名な「人間とも鳥とも妖精ともつかない男の子」ピーターパンは、もともと小説『小さな白い鳥』の中で描かれたエピソード群の登場人物だった。
この小説中の13章〜18章がピーターパンの登場エピソードとされる。各章タイトルは以下の通り
  • 第十三章:ケンジントン公園ひと回り
  • 第十四章:ピーター・パン
  • 第十五章:鶫の巣
  • 第十六章:締め出しの時刻
  • 第十七章:小さな家
  • 第十八章:ピーターの山羊
後に作者バリは『小さな白い鳥』からピーターパン関連のエピソードを抜き出し、修正加筆して『ケンジントン公園のピーターパン(PETER PAN IN KENSINGTON GARDENS)』として出版した。
んだけど、何故か同タイトルで二章分(13章と18章)のテキストがないバージョンもあったりする。
で、このテキストは、後者の翻訳版。
以下あらすじ
生後7日の赤ん坊ピーターは、人になることを拒絶して、窓からケンジントン公園に向かって飛び出し、公園の「赤ん坊の王宮とサーペンタイン池の間の広々とした芝生」の上に着地した。
そこでピーターは、人間でも小鳥でもない「どっちつかず」となる。
ピーターは小鳥たちと一緒に笛を奏でて暮らすこととなり、やがて妖精達も仲良くなる。
ある時、マイミー(別訳では「メイミイ」)という少女が、公園の閉門時間に間に合わず、公園内に「閉め込まれ」てしまう。
マイミーは妖精達の舞踏会や婚礼の騒動に巻き込まれる。妖精達は眠るマイミーの為に小さな家を造る。しかしマイミーが夢から覚めると、その家は小さく小さくなって、やがて雪の中に消えてしまった。
時が過ぎ、ピーターは母の元に帰りたいと願うようになる。
ピーターは妖精達の力を借りて空を飛び、彼の生まれた家へ戻る。
開け放たれた窓から母の寝室へ戻るが、眠っている母親に呼びかけるのを躊躇する。
行方不明の赤ん坊の気配を感じた母親が、うわごとのように彼の名を呼ぶが、ピーターはそれに答えなかった。
公園での小鳥たちや妖精たちとの暮らしが捨てきれなかったのだ。
「公園へ一度戻って、友人達に別れの挨拶をしてから、もう一遍帰ってくる」と決めて公園へ舞い戻ったピーターだったが、結局何ヶ月も家へ戻らなかった。
妖精達が彼を戻そうとしなかったというのも理由の一つだった。彼等は理由を付けてはピーターを引き留めていた。
ある晩とうとう決心して家へ飛び戻ったピーターだったが、数ヶ月前は開け放たれていた窓には閂がかけられてい、中には入れない。
覗き見れば、母親はピーターではない赤ん坊を抱いて、幸せそうに笑っている。
ピーターは必死に母親を呼ぶが、その声は彼女には届かなかった。
こうしてピーターは永遠に「閉め出され」てしまったのだった。
ピーターパンとウェンディ

原題:PETER PAN PETER AND WENDY(ピーターパン:ピーターとウェンディ)
作家名:ジェームス・マシュー・バリー(Sir James Matthew Barrie)
訳者名:katokt

ピーターパンの物語は2作の小説と1作の戯曲(『ピーター・パンあるいは大人になりたがらない少年』:初演1904年(全三幕)。出版1928年(全五幕))を経て、現在皆が良く知る物語へと変化した。

以下あらすじ
厳格な父親と可愛らしい母親(どうやら過去にピーターパンと出会ったことがあるらしい)との間に生まれた三人の子供たち――ウェンディ・モイラ・アンジェラとジョン、そしてマイケルのダーリングきょうだい。
ある晩彼等の家にピーターパンがやってくる。
ところがピーターは子供たちの「乳母役」の犬に吠え立てられて、影を落として退散してしまった。
一週間後、ピーターは影を取り戻しに来た。ウエンディは影とピーターを縫い合わせる。
ピーターは「パパとママが僕が大人になったら、何になってほしいなんてことを話してる」事に幻滅して、生まれたその日に家を飛び出したと語る。
そして「乳母がよそ見をしてるときに乳母車から落ち」「七日の内に這い上がれなかった」「迷子の男の子達」が送り込まれるネバーランドで、男の子達の隊長をしているとも。(ちなみにネバーランドに女の子がいない理由は「女の子はカシコイから乳母車から落ちたりしない」から、らしい)
ウエンディと弟たちはピーターに誘われて(妖精ティンカーベルの「粉」の力で)空へと飛び出し、「2つ目の角をまがって、あとは朝までまっすぐ」の場所にあるネバーランドへ向かう。
ネバーランドではウエンディが皆のお母さん役となり、二人の弟たちは他の「迷子の男の子」同様にピーター達と冒険(遊び)暮らした。
人魚と出会い、インディアンと交流したり、ウエンディが男の子達にお話をしてやったり、フック船長率いる海賊と戦ったり……。
しかしやがて、ウェンディたちは、両親の家に帰りたいと訴え、ピーターは不承不承彼等をダーリング家へ戻す。
迷子の男の子達も、ウェンディの家の子どもになることになる。
ただし、ピーターはやはり大人になりたくないが為に、ダーリング家の子になることを拒む。
それでもウエンディと別れたくないピーターに、ウエンディ達の母親は「年に一度、春の大掃除のときだけ、ウェンディをネバーランドに連れて行く」という提案をした。
翌年、ピーターはウェンディを連れに来たが、その翌年は来ない。ある年は来たり、ずっと来なかったり。
暫くピーターが来ない年が続いたあと、何事もなかったかのようにピーターが訪れたときには、ウェンディはすっかり大人になっていた。彼女は結婚しており、ジェーンという娘がいた。
迷子の男の子達もみな立派な大人になっていて、それぞれの仕事を持ち、それぞれの家庭を持っている。
子供のままのピーターは、大人になったウェンディの代わりにジェーンを連れて、ネバーランドに飛び立った。

更に年月が流れ、ウエンディの髪には白いものが混っている。ジェーンも大人になって、マーガレットという娘がいた。
今ピーターは、春の大掃除の時期にはマーガレットをネバーランドへ連れて行っている。
マーガレットが大人になったら、ピーターのお母さん役はマーガレットの娘が、その娘が大人になったらそのまた娘が、受け継ぐことになるだろう。
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