14回 テーマ「TUNAMI」
魚海岸線が遠くへ去っていった。こんなに早く引く潮は、今まで誰も見たことがない。 魚たちも初体験だったのだろう。波に乗りきれなかった群れは、濡れた砂浜の上で呼吸を封じられ、もがき、死んでいった。 「今夜は魚のスープね」 スカートの裾を広げて、女が言った。 「市場に持っていけば、いくらかになる」 男がバケツを持って駆け出した。 人々は息を弾ませ、争って魚を拾い上げている。 目の前にあるのは白く湿った砂。頭の中にあるのは幸せな食卓。 水平線の向こうでせり上がる茶色い水など、彼らには見えなかった。 やがて波を避けきれなかった人々は、濁った水の水の中で呼吸を封じられ、もがき、死んでいった。 |