【眞田井戸で遭いましょう】セルフノベライズ計画
―眞田井戸移動機構篇―
この物語は当然フィクションです。
This is a work of fiction.
【序】
――この城址には、古い掘抜井戸があつたので、眞田井戸と呼ばれて有名である――
――信幸の前、父の居城であつた時には、此城は、上田の北方太郎山の麓にある虚空蔵、牛伏、矢島、花古屋、荒城等の砦に、地下の抜穴があつて、敵が上田城を圍んでも自由に他と交通してゐたといふことである――
「【日本伝説叢書・信濃の巻】藤沢衛彦・編 日本伝説叢書刊行会・刊(大正六年)」より
深さ約十六.五m、直径約二mのこの古井戸は、調査が成された現在では、横穴も抜け穴もない普通の古い掘り抜き井戸であることが判っている。
そう、今はただの、在り来りの、何の変哲も無い、古井戸である。
しかし、それが掘り抜かれたあの時代にもそうであった、と果たして言い切れるものであろうか。