兵勢篇 第五 − 【兵勢篇 第五】読み下し文 【2】 BACK | INDEX | NEXT 2019/04/10 update |
孫子曰く、 凡そ衆を治むること寡を治むるがごとくなるは、分数これなり。 衆を闘わしむること寡を闘わしむるがごとくなるは、形名これなり。 三軍の衆、必ず敵を受けて敗なからしむるべきは、奇正これなり。 兵の加うるところ、碬をもって卵に投ずるがごとくなるは、虚実これなり。 凡そ戦いは、正を以って合し、奇を以って勝つ。 ゆえに善く奇を出だす者は、窮まりなきこと天地のごとく、竭きざること江河のごとし。 終わりてまた始まるは、日月これなり。 死してまた生ずるは、四時これなり。 声は五に過ぎざるも、五声の変は勝げて聴くべからざるなり。 色は五に過ぎざるも、五色の変は勝げて観るべからざるなり。 味は五に過ぎざるも、五味の変は勝げて嘗むべからざるなり。 戦勢は奇正に過ぎざるも、奇正の変は勝げて窮むべからざるなり。 奇正のあい生ずることは、循環の端なきがごとし。 たれか能くこれを窮めんや。 激水の疾くして石を漂わすに至るは勢なり。 鷙鳥の疾くして毀折に至るは、節なり。 このゆえに善く戦う者は、その勢は険にしてその節は短なり。勢は弩を彍くがごとく、節は機を発するがごとし。 紛紛紜紜、闘乱して乱るべからず。渾渾沌沌、形を圓くして敗るべからざるなり。 乱は治に生じ、怯は勇に生じ、弱は彊に生ず。 治乱は数なり。勇怯は勢なり。強弱は形なり。 故に善く敵を動かす者は、これに形すれば、敵必ずこれに従う。 これを予すれば、敵必ずこれを取る。 利を以てこれを動かし、卒をもってこれを待つ。 故に善く戦う者は、これを勢に求めて、人に責せず、故によく人を擇して勢に任ぜしむ。 勢に任ずる者は、その人を戦わしむるや、木石を転ずるが如し。 木石の性は、安なればすなわち静し、危なればすなわち動き、方なればすなわち止まり、圓なればすなわち行く。 故に善く人を戦わしむるの勢、圓石を千仞の山に転ずるが如くなる者は、勢なり。 |
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