そして夜は明ける。
昼食直前になってようやく目を覚ましたブライト・ソードマンは、頭痛もすっかり止んで、体調は万全だというのに、すこぶる不機嫌だった。
理由その一。夕べの「仕事」で、まるっきりイイところが無かったこと。
理由その二。夕べの失態の原因・理由ついて、エルが追求を“してくれない”こと。
(もっとも、追求されても「判らない」としか説明できないのだが)
そして。
理由その三。夕べ、エルはあのドレスの下に、ドロワースをはいていなかったこと。
何かの拍子にちらっとスカートがめくれて、中身が自分だけに見える、というハプニングを期待していたし、余裕があればそのハプニングを自作自演してしまおうとまで思っていた。
「コルセットは付けてくれたのに、どーしておパンツは駄目なのさ?」
残念でならなかった。
「あれは、胴鎧の役に立つと思いましたので。……実際、役に立ちましたし」
エルは普段通りの男装で、普段通りにノーメイク、普段通りの下げ髪をゆらしていた。
「おパンツは?」
「動きにくいですから。それに……」
頬の辺りが、うっすらと赤くなった。
「あんな物、恥ずかしくてはけるモノですか」
「ちぇ」
ブライトは舌打ちすると、
「どーせ一回こっきりの使い捨ての予定だったけど、使わずに捨てるンじゃもったいねーな。 ……よし、俺が穿いてやろう」
「なっ!?」
ブライトはいずこからか件のドロワースを引っ張り出すと、腰のところから右手を突っ込み、股のスリットからこぶしを突き出した。
「おまえさんのトコに夜這うって時に着りゃ、脱ぐ必要が無くって楽じゃねぇか」
耳先まで真っ赤になったエルの、条件反射右ストレートを、ブライトは左手で弾いた。
しかし、すぐに繰り出された左のカウンターから、身をかわすことができなかった。