、物知りで、口数が少ない、石ばかり拾っている変なヤツ……であることさえ解っていれば、それで充分だと思っていた。
その日も「トラ」は一、二個の石を拾って、ズボンのポケットに入れていた。
そして、その倍くらいの石をポケットではなく川の流れの中に投げ入れもしている。
「前から訊こう思ってたんだけど、どういう基準で拾うのと拾わないのと、決めるのさ?」
龍は水面に消えてゆく小さな波紋を見ながら訊ねた。
「トラ」はポケットの中に手を入れて、大切に持ち歩いている小石を全部取り出した。
大きさも色も様々だった。黄色みの強い茶色のもの、赤茶色のもの、黒みがかった青のもの……。おしなべて、透明感のある良く光る石ばかりだ。
「トラ」はその中から、明るい茶色で縞のある石を指して、恥ずかしそうに言った。
「虎目石」
「他のは?」
掌をのぞき込む龍に、「トラ」は
「牛血石、鷹目石。名前は違うけど、結局虎目の色違い」
と言い、うっすらと笑った。
「龍と同じ。自分の名前と同じのは拾う。そうじゃないのは……川に返す」
「僕と同じ」
龍は何となくほっとした気になった。