されている。
「寅姫様御身代札 思い込めて人型に抜きて龍神に祈念し 水にお流し下さい お気持ちは浄賽箱へ 辰寅社禰宜」
龍は文鎮をすこしだけ持ち上げて、紙を一枚引き抜いた。
墨で文字の印刷された四角い紙は、点線に切り込みが入っていて、手で簡単に人型にくりぬけるようになっていた。
「そうか、ここがやっぱり御札が流れはじめる場所なんだ」
誰かがここで何かを念じながら人型の御札を池に投げる。雨が降って池の水が増えると、御札は川に流される。流れて流れて、翌々日ぐらいには、あの川瀬にたどり着く。
一つ謎が解けた気がした龍は、ほんの少しすっきりした気分で池を眺めた。
でもそのすっきりは、すぐに別のもやもやで覆われてしまった。