クラスメイトの内には
「貧乏くじを引いた」
などと文句を言う者も多いが、龍はこの校舎で学べることが嬉しかった。
すきま風が寒いとか、掃除が面倒だとか、第三校舎に作られた図書館までの移動距離が長いとか、確かに難点は幾つもある。
しかし、新校舎のひんやりとするコンクリートの床よりも、旧校舎の木の床のほうが暖かい。
それに木の床には龍のお気に入りがある。
ちょうど彼の机の足がある辺りの床に小さな木の節があるのだが、これがまるで栓のように抜けたりはまったりするのだ。
龍は、授業中に足先で器用にその節を抜くと、消しゴムかすの丸めたヤツを節穴の中に蹴り落とす、ゴルフもどきの他愛のない遊びをして楽しんだ。
彼一人で遊ぶこともあるが、前後左右両隣の級友達も参戦する。
これはコンクリートの床では楽しめない。(この点に関しては、先に挙げた文句を言う級友も、龍に同意している)