呂の時は母屋に来る。だから今、ボクはここにいる」
言い終わると、「トラ」は中指を折りたたんだ。そして一つ息を吐いてから、またしゃべりはじめる。
「姫ヶ池のほとりにお社があるだろう? 夏の間、ボクはお社の側の木陰にシートやバスタオルを引いて昼寝をするんだ。とても涼しいから。今日もそうしていた」
言い終わったトラは、人差し指を折りたたんで、大きく深呼吸をした。
「龍が『お婆さん』だと思っている人は、ボクのお母さんだ」
「え!?」
龍は思わず大声を上げた。そうして、目玉の位置を変えないで、頭をぐるんと動かして、顔を「トラ」の方へ向けた。
「トラ」はやっぱり笑っていた。