ずむずは背骨に沿って駆け上り、あっという間に頭のてっぺんに届いた。 頭のてっぺんの髑髏の丸いところにぶつかったむずむずは、目玉の方に跳ね返って、鼻の奥の方で止まった。 止まったむずむずはどんどん大きくふくらんだ。ふくらんで、ふくらんで、耐えきれなくなったとき、目玉と鼻の穴から一息に吹き出した。「俺は、悪い龍だ」 涙と鼻水と一緒に、喉の奥から声が出た。「悪い龍は、人の為に尽くそうなどと思わぬモノでありましょう?」 寅姫の声にも、涙と洟が混じっていた。