彼はちょっと躊躇した後、床の上に放り投げてあるくたびれたグローブを蹴飛ばして、部屋の隅の玩具箱にドライブシュートで放り込んだ。
二人は当たり前のように彼の頭の中で行動していた。
龍は可笑しくなった。背筋を走っていた冷たい電気が、どんどんと暖かくなった。
こわばっていた顔の氷もぐんぐん溶ける。
じっと彼を見ていた「トラ」は、彼と同じタイミングでクスリと吹き出した。
それは、龍の頭の中に浮かんだ風景と同じモノを自分でも見ているみたいに、まるきり同じ拍子だった。
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。だから、何の心配もない。大丈夫」
「トラ」ははっきりと言い切った。
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。だから何の心配もしない。大丈夫」
龍ははっきりと言い返した。