れる水、揺れる空気、漂う白い影。
『どこで聞いた音だろう』
思い出そうとして龍が目を開こうとしたその瞬間、空が光った。
痛いほど明るい光が瞼の隙間をこじ開け、網膜に突き刺さる。
鼓膜の奥で高い金属音が反響する。
びりびりと音を立てて震えるガラスから、龍ははじき飛ばされた。
彼の身体は廊下を転がり、障子を二枚ばかり倒して、古い和箪笥にぶつかり、ようやく止まった。
光と音と、そして体中の痛みに、彼は全身を振るわせた。
顔を上げると、和箪笥わずかに揺れているのが見えた。
倒れる……慌てて飛び退いたとき、和箪笥の上に積まれていたボール紙の箱が2つ3つ崩れ落ち、龍の足下でぱっくりと蓋を開けた。
引き出物のタオルや良い匂いのする石鹸が床に散らばった上に、白い紙切れが降り注ぐ。
それは人の形に切り抜かれ、幾つも難しい字が書かれていた。