夏休みの前から夏休みの終わりまでの話。 − 【47】

れる水、揺れる空気、漂う白い影。
『どこで聞いた音だろう』
 思い出そうとして龍が目を開こうとしたその瞬間、空が光った。
 痛いほど明るい光が瞼の隙間をこじ開け、網膜に突き刺さる。
 鼓膜の奥で高い金属音が反響する。
 びりびりと音を立てて震えるガラスから、龍ははじき飛ばされた。
 彼の身体は廊下を転がり、障子を二枚ばかり倒して、古い和箪笥にぶつかり、ようやく止まった。
 光と音と、そして体中の痛みに、彼は全身を振るわせた。
 顔を上げると、和箪笥わずかに揺れているのが見えた。
 倒れる……慌てて飛び退いたとき、和箪笥の上に積まれていたボール紙の箱が2つ3つ崩れ落ち、龍の足下でぱっくりと蓋を開けた。
 引き出物のタオルや良い匂いのする石鹸が床に散らばった上に、白い紙切れが降り注ぐ。
 それは人の形に切り抜かれ、幾つも難しい字が書かれていた。


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2015/10/05update

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