ける。
茶色い水はゴミと土と石ころを連れて下流に突き進む。
やがて本流と合流し、さらに下って海に出るのだろう。
そして、
「戻ってくる」
龍はもう一度天を仰いだ。
わずかにのっこった雲がオレンジ色の光に裂かれ、紫がかった空がその裂け目を浸食している。
彼はそのオレンジに手をかざした。
長い爪、節くれ立った指、大きな甲の、逞しい手が、彼の頭上にあった。
その内側に、短い爪、細い指、薄っぺらい甲の、幼い手があった。
ほっぺたがゆるんだ。二つの違うモノが同じモノに思えた。
心が軽い。でも濡れた洋服と身体は、ずっしりと重かった。
龍はその場にぺたりと座り込んだ。体育座りの格好で膝を抱え、膝小僧の間の谷間に額を押し当て、目を閉じた。