龍の背筋も凍っていた。
それはコンクリート詰めの子供の死体を想像したからでも、何百年も昔のおぼれた人たちの死体の固まりを想像したからでもなかった。
「ヒトバシラの生け贄」
人間を使った生け贄……彼の頭の中に、あの白い御札と、虎目石と、虎の顔がいっぺんに浮かんだ。
危うくまた卒倒しそうになったが、すんでの所で誰かの
「校長先生が来た!」
という叫び声を聞いたので、どうにか踏みとどまることができた。
教室中、廊下にまで広がっててんでに放していた生徒達が、歓声とも叫声とも付かない声を上げながら、自分の席へと駆け戻ってくる。
龍もロッカーにランドセルを放り込んで、ばたばたと席に着いた。
教室の教壇に近い方のドアが開いて入ってきたのは、誰かの叫び声通りに、少し禿げた、少し太った、少し怖そうな、少し優しそうな、校長先生だった。