AS YOU LIKE IT(TALES FROM SHAKESPEARE)(お気に召すまま)

Mary Lamb(M.ラム)

SOGO_e-text_library訳




 この話は、フランスが数々の所領(公国とも言われていた)に別れていたころの話である。その所領の1つはある横領者によって治められていた。彼は、正当な公爵であった、みずからの兄から位を取り上げて追放したのだった。
 公爵は、自分の領地から追放され、忠臣たちとともにアーデンの森[#注1]の中へ引きこもっていった。善良な性格だった公爵は、ここで親友たちと生活していたのだ。親友たちの方でも、自分の土地や収入が不正な横領者の元へはいるというのに、あえて公爵のために、みずから進んで付き従っていた。慣れていくにつれて、ここで送っている屈託のない気楽な生活が、虚飾や華やかさに満ちた宮廷生活よりもずっと楽しくなってきた。ここで、彼らは英国でかつてロビンフットが暮らしていたように生活していた。また、この森には、毎日貴公子が大勢宮廷から遊びに来て、黄金時代[#注2]の人たちのように心安らかな日々を送っていた。
 夏になると、公爵たちは森の巨木がつくる快い日陰に寝そべって、野生の鹿が楽しそうにとびはねているのを眺めていた。いじらしいまだら毛のお馬鹿さんたちはとてもかわいく見えた。鹿たちは森に古くから住んでいるように見えた。そんな感情から、鹿肉を食料にするために鹿を殺さなければいけないことを公爵たちは悲しんだ。冬の寒い風は、公爵に、自分の身にふりかかった運命のいたずらを思わせた。公爵はぐっとこらえてこう言うのだった。「私の体に吹きつけるこの冷たい風こそ、真実を告げているのだ。お世辞を言うことはなく、ただ私の立場を正しく示してくれる。手痛くかみつくけれど、その歯は薄情や忘恩ほど鋭くはない。人は逆境をとやかく云々するようだが、そこからけっこうな用途がくみ取れるのだ。薬用として珍重される貴重な玉が、毒があっていやがられるひきがえるの頭からとれるようにね。[#注3]」
 こんなふうに、忍耐強い公爵は、見るものすべてに有益な教訓を学んできた。そして、常に教訓を読みとってきたおかげで、先に述べたことから人里離れた生活を余儀なくされた今でも、木々に言葉を、流れる小川に書物を、石ころの中に神の教えを、つまり、あらゆるものの中によきものを見いだすことができるようになった。
 さて、追放された公爵には、ロザリンドという一人娘があった。ロザリンドは、横領者フレドリックがロザリンドの父を追放したときに、フレドリックの娘シーリアの遊び相手として宮廷に引き続き滞在することが許されていた。2人の娘の間には、固い友情が結ばれていた。互いの父親が仲違いしても、そのちぎりはまだ続いていて、シーリアは、ロザリンドに対して力のおよぶ限り愛情を傾けることで、ロザリンドの父を廃するという、自分の父がなした不正の償いをしようとした。ロザリンドの方では、父が追放され、自分は追放した悪党に依存して暮らしていることを重うと、心が暗くなった。シーリアは、ただただ彼女を励ますのだった。
 ある日、シーリアが、いつものように優しく「お願いロザリンド。もっと陽気になさって。」と言っていた。そこへ、フレドリック公の使いがやってきて、レスリングの試合がもうすぐ始まるところですから、もしご覧になりたければすぐに宮廷前の中庭にお越し下さい、と告げた。シーリアは、ロザリンドが喜ぶだろうと考え、試合を見に行くことにした。
 レスリングは、今でこそ田舎の人がやるだけになってしまったけれど、当時は王侯貴族や貴婦人や淑女たちの間でも大人気のスポーツだった。そういう背景から、レスリングの試合にシーリアとロザリンドは行ったのである。2人には、その試合がとても悲劇的な結末をむかえるように思えた。というのは、体が大きくて力も強いことで知られていて、長年にわたってレスリングの技術を磨き、その競技で多くの人を殺してきた男が、とても若い男とレスリングをすることになっていたからである。その若者はあまりに若く、まだ技も未熟だったので、観客はみな、若者がきっと殺されてしまうだろうと思っていた。
 フレドリック公は、シーリアとロザリンドを見つけてこう言った。「やあ、おまえたちもレスリングを見にお忍びでやってきたのかな。だが、おまえたちにはこれはあまり面白くないだろう。互いの差が大きすぎるんでね。あの若い方がかわいそうだから、レスリングを思いとどまるように説得したいと考えてるんだ。2人で、あの男を説得してくれないか。」
 令嬢たちは、このような人道的な役目をするのを大いに喜んだ。まずシーリアが、見知らぬ若者に、こんな試合はおやめ下さい、と頼んだ。それからロザリンドが、たいへん優しく彼に話しかけた。そこには、若者の身に待ちかまえている危険に対する、同情と思いやりがこもっていた。
 彼女のやさしい言葉は、若者に試合を放棄させるに値するものだったけれども、この愛らしい令嬢の目の前で、勇気を見せてやりたいという思いが彼を支配する結果となった。彼はシーリアとロザリンドの懇願を、気品高く控えめな態度で拒否したので、令嬢たちは前以上に彼が気がかりになった。彼は結局こう言って断った。「あなた方のような、美しい立派な娘さんに逆らう結果となって申し訳ありません。しかし、その美しい目と優しい心とで、私の試合を見守っていてください。私が負けても、それは恵まれない1人の人間が恥をかくだけのこと。殺されたところで、死にたいと願うものが死ぬだけのことです。友だちに迷惑をかけることもありません。私のことを嘆く人などこの世にいないのです。世間も損はしませんよ、無一文の私が死んでも。私が場所をあければ、世界は私よりもっといいもので埋め合わせがつくでしょう。」
 いよいよレスリングの試合が始まった。シーリアは、見知らぬ若者がけがをしないように願っていた。一方ロザリンドは、もっと深く彼に同情していた。若者が言った、自分は孤独なのだとか、死んでしまいたいといった話は、ロザリンドに、あの人も自分と同じ不幸な身なのだと思わせた。それで、大変彼に同情していた。レスリングの間中ずっと彼のことを心配していた。それは、その瞬間に彼女が見知らぬ若者に恋をしてしまったと言ってもよかった。
 美しい令嬢たちが無名の青年に見せた親切心が、彼に勇気と力を与えた。彼は奇跡を起こした。相手を完全にうち負かしてしまったのだ。相手は大変な負傷を負ってしまい、しばらく口もきけず、身動きもできなかった。
 フレドリック公は、この見知らぬ若者が見せた勇気と腕前をおおいに気に入って、召しかかえるつもりで名前と素性を知りたがった。
 若者は、自分の名はオーランドゥで、ロウランド・ドゥ・ボイズ卿の末子だといった。
 オーランドゥの父、ロウランド・ドゥ・ボイズ卿は数年前に亡くなっていた。しかし在世中は、追放された公爵の忠実な臣下であり、親友でもあった。そのため、オーランドゥが、自分が追放した兄の友人の息子と聞いて、フレドリックが抱いた勇気ある若者に対する好意はすっかり不快の念に変わってしまった。彼はたいそう不機嫌になり、その場を去ってしまった。兄の友人だった人の名前を聞くことは、フレドリックにとっては不愉快なことであったが、まだ若者が見せた勇敢さを惜しむ気持ちは持っていたようで、フレドリックは出ていくときに、オーランドゥが誰か他の人の息子だったらよかったのに、と言った。
 ロザリンドは、彼女の新しいお気に入りが、父の友人の息子だと聞いて喜び、シーリアに言った。「父はロウランド・ドゥ・ボイズ卿が好きでしたから、もし私が、あの人があの方のお子さまと知っていたら、あんな冒険をなさる前に、私は泣きながらお止めしたでしょうに。」
 それから、令嬢たちはオーランドゥの所へ行った。オーランドゥは、公爵が急に不機嫌になったことにとまどっていた。2人は彼に親切な励ましの言葉をかけた。そして2人は立ち去ったが、ロザリンドは引き返し、父の旧友の息子にして、勇気ある若者に、丁寧に話しかけた。そして首から鎖をはずし、こう言った。「あなた、私のためにこれをかけてください。私は幸せと縁がないのです。もし幸せになったら、あなたにもっと立派な贈り物を差し上げるのですけど。」
 娘たちだけになったとき、ロザリンドの話はまだオーランドゥのことだった。シーリアは、いとこが美しく若いレスラーを好きになったことに気づいた。そしてロザリンドに言った。「そんなに急に恋に落ちるなんて、ありえるのかしら?」
 「公爵は―私の父のことですけど―あの方のお父様をとても愛していましたわ。」ロザリンドは答えた。
 「そんなことが、」シーリアは言った。「その人の息子さんを愛すべきだってことになるのかしら? それなら、私はあの方を嫌うべきだってことになるわ。父はあの方のお父様を嫌っていましたから。でも私はオーランドゥを嫌いませんよ。」
 フレドリックはロウランド・ドゥ・ボイズの息子を見て、大変不機嫌だった。追放された公爵が、貴族たちの間で今も慕われていることを思いだしたのだ。それに、姪のこともつねづね不愉快に思っていた。なぜなら、人々が姪のことを褒めそやし、立派な父親のことで彼女のことを気の毒がっていたからである。そんなわけで、急に姪を憎むようになった。
 シーリアとロザリンドがオーランドゥのことを話していると、フレドリックが部屋に入ってきた。そして、すっかり怒った顔つきで、ロザリンドに対し、今すぐ宮殿を出ていけ、おまえも父親のように追放の身になれと命令した。シーリアはロザリンドを助けようとしたが無駄だった。フレドリックは、お前のためにロザリンドを追放しないでおいたのだ、と言ったのである。
 「あのころ私は、あの人をおいてくれとはお願いしませんでした。」シーリアは言った。「私はまだ若くて、あの人の良さが分からなかったんですもの。だけど今は、もうよく知ってますわ。それに、長いこと一緒に、寝て、起きて、勉強して、遊んで、食事をしてきたんですから、もうロザリンドなしでは生きていけませんわ。」
 それに対し、フレドリックはこう答えた。「あの女はもうお前の手におえる女じゃないんだよ。あたりはいいし、おとなしいし、辛抱強いから人々の受けがいい。みんなあいつに同情するのだ。あの女の弁護をするのはおろかだよ。あの女がいなくなれば、お前はもっと光って立派に見えるよ。だから、あいつのために口を開かないでほしい。あの女を追放する命令は取り消せないんだよ。」
 シーリアは、父にロザリンドを宮殿に残しておくよう説き伏せることは自分にはできないだろうと判断した。そして、即座にロザリンドについていこうと決めた。その夜、2人は宮殿を抜けだし、ロザリンドの父である、追放された公爵を、アーデンの森まで捜しに行った。
 出発前、シーリアは、若い娘がたった2人で立派な服を着て旅をするのは危ないと考えた。そして、田舎娘に変装して身分を隠したらどうだろうかと提案した。ロザリンドは、どちらかが男装したらもっと安全だろうと言った。すぐに話はまとまった。ロザリンドの方が背が高いから、田舎の若者の服を着ることにする。シーリアは田舎娘らしい服装に着替える。2人の間柄は兄と妹ということにしよう。ロザリンドはゲニミードと名乗り、シーリアはエリーナという名を選んだ。
 こういう変装をして、道中の足しにするためのお金と宝石を持ち出して、美しい娘たちは長い旅路についた。アーデンの森はとても遠いところにあった。公爵の領地の国境から、はるか彼方にあった。
 ロザリンド嬢(今はゲニミードと呼ばなければならないが)は男装していたから、男らしい勇気を身につけているように見えた。シーリアは、長い旅の間も変わらぬ友情をロザリンドにささげていた。それに対し、新しく出現した兄は真実の愛情を示してくれた妹に陽気に振る舞った。端から見ると、2人はまさに、素朴で陽気な兄ゲニミードと、おとなしい村の乙女エリーナであった。
 やがて、2人はアーデンの森に着いた。そこには道中にあったような、便利な宿やよい施設はもう見あたらず、食料や休息する場所にも困るようになった。ゲニミードは、道中ずっと面白い言葉や楽しい話で妹を笑わせてきたが、エリーナに対してもう疲れたと言った。そして、男装の手前申し訳ないけれども、女らしく泣いてしまいたい、と本音をもらした。エリーナも、もう一歩も歩けないと言った。
 ゲニミードは、女の人を「弱き器のごとく[#注4]」はげまし慰めるのは男の義務だと考え、もう一度頑張ることにした。そして、彼の“妹”に向かって元気そうに「さあ、元気を出すんだ、エリーナ。ぼくたちの旅ももう終わりだよ。アーデンの森に入ったんだからね。」
 しかし、まやかしの男らしさや空元気では何の助けにもならなかった。2人はアーデンの森にはいるのだが、どこに公爵がいるのか分からなかったのだ。2人の疲れ果てた娘たちの旅はここで悲しい結末をむかえるものと思われた。2人は道に迷い、飢えて死ぬのに違いなかった。だが2人は運が良かった。死ぬほど疲れた状態で、何の望みもなく草の上に座っていると、土地の人がちょうど通りかかったのだ。ゲニミードは、厚かましい男といった感じでこう話しかけた。「羊飼い君、好意ででも金銭ずくでもいいのだが、この寂しい場所で僕らをもてなしてくれるんだったら、頼むからどこか休めるところに案内してくれないか。この娘《こ》はぼくの妹なんだが、道中で疲れてしまって、食べ物がなくて気を失わんばかりなんだ。」
 男はこう答えた。「俺はただの羊飼いの下男だ。主人の家は売り物になっているから、大したもてなしもできんのだが、ついてきてくれれば何なりと使ってもらってかまわんよ。」
 2人は男についていった。もうすぐ救われるという希望で元気が出てきた。そして、羊飼いの家を買い取り、その家へ案内してくれた男を下男に雇った。こんなふうに運良くこぎれいな家を手にいれたし、食料も十分あったから、2人は森のどのあたりに公爵が住んでいるのかが分かるまで、ここにとどまることにした。
 旅の疲れを休めた2人は、新しい生活にだんだん染まっていき、羊飼いの男女という仮の姿をすっかり信じ込んでいるようだった。だが、ゲニミードはときどき自分がロザリンドという娘であることを思いだし、父の友人であった老ロウランド卿の息子であることから深く愛することとなったあの勇敢なオーランドゥのことに想いをはせた。ゲニミードは、オーランドゥは自分たちが苦労して旅してきた距離だけ離れていると思っていたけれども、オーランドゥもアーデンの森にいるみたいに思えてきた。こうしてこれから語る不思議な出来事が起こったのである。
 オーランドゥはロウランド・ドゥ・ボイズ卿の末子であった。卿は死ぬときオーランドゥを(当時彼がごく幼かったので)長男であるオリヴァの手に託し、弟に立派な教育を与え、家柄にふさわしい待遇を与えるように祝福をこめて命じた。ところがオリヴァはその命を受けるに値しない兄であった。彼は死に際の父の命を無視し、弟を学校にやらず、教育も与えないでただ放っておいたのだ。しかし、オーランドゥは、偉大なる父親譲りの高貴な気質を持っていたから、教育には恵まれなかったものの、周到な配慮をもって育てられた青年のように見えた。オリヴァは弟が、教育を受けていないにも関わらず、よい心と立派な態度を見せるのに嫉妬して、ついに弟を殺そうと考えた。それを実行するために、人々をそそのかし、弟がある有名なレスラー(前にも述べたように彼は多くの人を殺していた)と格闘するようにし向けたのだった。こんなひどい兄にないがしろにされたものだから、オーランドゥは「自分はまったく孤独だから死んでしまいたい。」ともらしたのである。
 オリヴァは、自分のたくらんだ謀略に反して弟が勝利を得たことで、ますます彼に嫉妬し、オーランドゥが寝ている寝室を焼いてやろうと誓った。だが、オリヴァがそう神に誓っているのを、とある老人が聞いていたのだった。老人は2人の父の忠実な召使いだった人で、オーランドゥのことを、ロウランド卿に似ていることから愛していたのである。
 さて、老人はオーランドゥが公爵の宮殿から帰ってくるのを出迎え、真っ先に大事な若主人が危機に陥っていることをこんな激しい口調でわめいた。「おお優しいご主人様、大事なご主人様、先公ロウランド卿の忘れ形見様! なぜあなたは優しく、強くて、勇ましいのですか。なぜあなたはあの有名なレスラーを負かすような間抜けなことをなさったのですか。あなたの評判はあなたより先にお屋敷に届いてしまいましたぞ。」
 オーランドゥはなんだかわけが分からず、いったいどうしたんだ、と彼に尋ねた。すると老人は、お兄さまは悪いお人で、オーランドゥへの衆望をかねてからねたんでいたが、今また彼が公爵の宮殿で勝利を得たことを聞きつけ、今夜にも寝室に火を放って焼き殺そうとしている次第を話した。
 老人は即刻逃げだして身の危険を脱するようオーランドゥに言った。そして、彼が無一文であることを知っていたので、アダム(これが善良な老人の名前だった)は自分のわずかな貯えをもってきた。そしてこう言った。「私は500クラウン持っております。お父様の元で貯めた、つましい給金でございます。私の手足が奉公に耐えられなくなったときに備えて蓄えてまいりました。これをお持ち下さい。カラスに餌を与えたもうお方[#注5]が、私の老後の慰めとなりますように。さあ、このお金をそっくり差し上げます。私を召使いにしてください。ご覧の通りの年寄りですが、お仕事やご用では若い者には負けませんから。」
 「ありがとう、じいや!」オーランドゥは言った。「お前は昔ながらに律儀な召使いなんだねえ。今じゃ全然見かけないよ。では、一緒に行こうよ。お前が若いときに稼いだ金を使い果たす前に、2人で暮らしていける仕事を見つけられるだろう。」
 忠実な老僕とその愛する主人は一緒に出かけた。オーランドゥとアダムは、どこというあてもなく旅を続け、やがてアーデンの森にたどり着いた。そこで2人は、ゲニミードやエリーナと同じように、食料がなくなって難儀した。彼らは人家を求めてさまよったあげく、空腹と疲労とでほとんど力が尽きてしまった。ついにアダムは言った。「ご主人様、私は飢え死にします。もう一歩も歩けません。」アダムはその場を墓場にするつもりで横になり、愛する主人に別れを告げた。オーランドウは、アダムが弱っているのを見て、この老僕を腕に抱え、快適な木陰へ連れていき、こう言った。「元気になってくれ、アダム。しばらくここで疲れた手足を休めるんだ、死ぬなんて言わないでくれよ!」
 オーランドゥは食べ物を探しに出かけ、偶然にも公爵がいる場所を通りかかった。折しも公爵と友人たちは夕食を楽しもうとしていた。かの立派な公爵は草の上に座っていて、とある大木の深い葉影のほかには天蓋《てんがい》と呼べるものはなかった。
 オーランドゥは空腹のためその食べ物が欲しくてたまらなくなり、刀を抜き、暴力で食べ物を奪い取ろうと、こんな事を言った。「控えろ、何も食べるな、俺は貴様たちの食べ物をもらわねばならんのだ!」公爵はオーランドゥに、苦し紛れにそんな無法なことをするのか、それとも作法を無視する乱暴者なのかと尋ねた。それに対してオーランドゥは、飢え死にしそうなのだと答え、公爵はここに座って食べるがいいと告げた。オーランドゥはそのやさしい言葉を聞いて刀をおさめ、人の食べ物をよこせと言った無礼な態度を恥じて赤面した。「どうかお許し下さい。」オーランドゥは言った。「私はここでは万事野蛮だと思ったのです。それで荒々しい命令ずくの態度に出てしまいました。ところで、あなた方は、こんな寂しいところで、ゆううつな木陰のしたで、時間を無駄に過ごしておられますが、もしかして昔はいい身分のお方であったのなら、教会の鳴らす鐘が聞こえるところにお住まいだった[#注6]方々であったのなら、立派なお人の宴会に出席したことがあったのでしたら、まぶたから涙を拭ったことがあったのでしたら、人をあわれんだりあわれまれたりすることがどういうことか知っておられるのでしたら、穏やかな言葉があなた方を動かして、私に人間らしい態度を示していただけますようにお願いいたします!」
 公爵は答えた。「確かに我々は(君の言われるとおり)以前は身分のあるものだった。今はこのような荒れ果てた森の中に住んでいるけれども、町中や都市に住んでいたこともあるし、聖なる鐘に誘われて教会に行ったこともあるし、貴人の宴席に列したことも、清らかなあわれみに湧いてくる涙を拭ったこともある。だからお座りなさい、そして好きなだけ我らの食事をとりなさい。」
 「実は気の毒な老人がいます。」オーランドゥは答えた。「彼は忠義一徹から、私についてきて、疲れた足を引きずってきましたので、老齢と空腹にまいってしまっています。その人が安心するまでは、一口も食べるわけには行きません。」
 「それでは外へ行って、その人をここへ連れてきなさい。」公爵は言った。「我々はあなたが戻ってくるまで食べないでいよう。」
 そこでオーランドゥは、子鹿を探して餌をやる雌鹿のごとき速さで出ていった。しばらくして、アダムを腕に抱えて帰ってきた。すると公爵は言った。「大切なお荷物を降ろしなさい。2人ともよく来なさった。」
 公爵たちは老人に食べ物を与えて励ました。老人は元気づき、健康と力とを回復した。
 公爵はオーランドゥの身の上を尋ねた。そして、オーランドゥが公爵の旧友であるロウランド・ドゥ・ボイズ卿の息子と分かって、オーランドゥを手元に置くことにした。こうして、オーランドゥと老僕とは公爵とともに森に住むこととなった。
 オーランドゥがアーデンの森に着いたのは、ゲニミードとエリーナがここにやってきて、(前に話したように)羊飼いの小屋を買ってから幾日もたたないころだった。
 ゲニミードとエリーナは不思議なことを発見してびっくりした。ロザリンドの名前があちこちの木に彫られており、そこに、ロザリンドへの愛を綴ったソネット[#注7]が結ばれているのだった。これはどうしたことだろうといぶかしんでいると、2人はオーランドゥに出会った。そして、彼の首にロザリンドがあげた鎖がかかっているのを見つけた。
 オーランドゥは、ゲニミードが、謙譲の美徳と好意とでもって彼の心をとらえた美しいロザリンド姫であり、その名前を終日彫り続け、その美しさをほめたたえるソネットを書いた相手だとは夢にも思わなかった。しかし、この美しい羊飼いが上品であるのを気に入って、彼と話をし始めた。そして、ゲニミードの中に、愛するロザリンドに似た点があるように思えたが、気品の高い淑女にあった威厳のある態度は全然ないなと考えた。なぜそうなったかというと、ゲニミードは、少年が青年になろうとしている若者に見られる図々しさで話をしたからである。
 さて、ゲニミードはオーランドゥに、茶目っ気たっぷりなおどけた調子で、ある恋人の話をした。「その人は、ぼくらの森をうろついて、木の皮にロザリンドと彫り散らかして、若木をダメにしちまうんだ。おまけに、サンザシに頌歌《しょうか》[#注8]をつるしたり、いばらに哀歌をさげたり、それがみんな、そのロザリンドを賛美しているんだ。もしこの男を見つけたら、恋わずらいを治すいい忠告をしてやるんだがなあ。」
 オーランドゥは、君の言う馬鹿げた恋人とは自分だ、と白状し、ゲニミードに、君の言う忠告というやつを与えてくれ、と頼んだ。ゲニミードが提案した薬、彼が与えた忠告というのは、オーランドゥが、毎日自分とその妹エリーナが住む小屋に来ることであった。「それからね、」ゲニミードは言った。「ぼくがロザリンドの真似をするから、君は、もしぼくがロザリンドだったらやるような調子で、ぼくに愛の告白をしてくれ。そうしたらぼくは、むら気な女性が恋人にしてみせる気まぐれなやり口を真似しよう。しまいには、君は自分の恋愛が恥ずかしくなるだろう。これが君を治すぼくのやり方さ。」
 オーランドゥは、この治療法はあまり信用しなかったが、それでも毎日、ゲニミードの小屋へ行き、告白ごっこをすることに同意した。そして毎日、オーランドゥはゲニミードとエリーナとを訪ねた。オーランドゥは羊飼いのゲニミードをロザリンドと呼び、毎日、青年たちが恋人に愛の告白をするときによく使うような言葉を言い続けた。しかし、ゲニミードが、オーランドゥのロザリンドに対する恋わずらいを癒すことができたようには見えない。
 オーランドゥは、こんなことは軽い戯れにすぎないと思った(ゲニミードがロザリンド本人であるとは夢にも思ってなかった)けれども、心にもっている愛の想いを言葉にする機会を得て、ゲニミードと同じくらい告白ごっこを楽しんでいた。ゲニミードはというと、1人秘密を楽しんでいた。オーランドゥが話す美しい愛の告白は、実はみな当人に贈られているのを知っていたからだ。
 こうして、若者たちに楽しい日々がすぎていった。そして、人のいいエリーナは、告白ごっこをゲニミードが楽しんでいることを見てとって、好きなようにさせていた。自分も告白ごっこに興じる一方で、ロザリンド姫は実は父公爵の前に姿を見せていないことをゲニミードにあえて教えなかった。その場所をすでにオーランドゥから聞いて知っていたのに、である。
 ある日ゲニミードは公爵に出会い話をした。公爵はゲニミードの素性を尋ねた。ゲニミードが、自分は公爵と同じく良家の出であると話すと、公爵は笑った。こんなかわいい羊飼いが高貴な血を引いているとは思わなかったからである。公爵が元気で幸せそうに見えたので、ゲニミードは安心して、それ以上の説明は2、3日先送りすることにした。
 ある日の朝、オーランドゥがゲニミードを訪ねようとすると、男が1人地面に寝ていた。その首には緑色の大蛇が巻きついていた。大蛇はオーランドゥが近づくのを見ると、するすると藪の中に入ってしまった。オーランドゥがなおも近づくと、一頭の雌ライオンがその男にねらいを定めてしゃがんでいた。その頭は地面についており、猫が獲物を狙うがごとく、眠っている男が目を覚ますのを待っているのだった(ライオンというものは、死んだものや眠っているものは食わないといわれている)。摂理の神が、この男を蛇と雌ライオンという危機から救いださんとして、オーランドゥをつかわしたみたいに思えた。しかし、オーランドゥがその男の顔を見ると、二重の危機にさらされながら眠っている男は、なんと自分の兄オリヴァであった。かねてからオーランドゥを虐待し、なおかつ火を放って焼き殺そうとした当人なのだった。
 オーランドゥは、このまま兄を飢えた雌ライオンの餌食にしてやろうかと思いかけたが、兄弟愛と生来の育ちの良さから、はじめに抱いた兄への怒りを抑えた。そして、刀を抜き、雌ライオンに立ちむかい、これを倒した。これにより、彼は兄の命を毒蛇と狂暴な雌ライオンから救いだした。しかし、雌ライオンは倒される前に、鋭い爪で相手の腕を引き裂いたのだった。
 オーランドゥが雌ライオンと格闘している間に、オリヴァは目を覚まし、自分の弟が、あれほど自分がいじめたのにもかかわらず、命を懸けて野獣の猛威から自分を救ってくれたのを知った。恥と後悔で胸がいっぱいになり、卑劣な行為を悔い改め、オーランドゥに、自分が加えてきた侮辱を許してくれと涙を流して訴えた。オーランドゥは兄が悔い改めたのを見て喜び、すぐに彼を許した。2人は抱き合った。オリヴァは最初は弟を殺すつもりで森に来たのだったが、これ以来、真の兄弟愛でもってオーランドゥを愛するようになった。
 オーランドゥの腕の傷からはおびただしい量の血が出ていた。体が弱ってとてもゲニミードを訪ねていけそうもなかったので、兄に、ゲニミードのところへ行って(「その人をぼくはふざけてロザリンドと呼んでいるんだ。」とオーランドゥは言った)、自分の身に起こったことを知らせてくれ、と頼んだ。
 そこでオリヴァはゲニミードの家を訪ね、ゲニミードとエリーナに、オーランドゥが命を救ってくれた次第を話した。オーランドゥの勇敢さと、自分が運良く難を免れた事情を語り終わると、自分こそオーランドゥを虐待した兄であると告白し、兄弟の仲直りの話をした。
 オリヴァが自分の犯した罪を深く後悔しているのを見て、優しい心を持つエリーナは感銘を受けた。そしてたちまちオリヴァを愛するようになった。一方オリヴァも、自分の苦悩を聞いてエリーナが深く同情してくれるのを見て、たちまちエリーナを愛するようになった。
 ところで、エリーナとオリヴァの胸中に愛情が忍びこんでいる間に、ゲニミードにも愛情の力が働いていた。ゲニミードは、オーランドゥが危機に陥り、雌ライオンに傷つけられたのを見て、気を失ってしまった。再び気づいたとき、彼はロザリンドならこうするだろう行動をしたんだと称し、オリヴァにこう言った。「弟さんのオーランドゥに、ぼくがうまく気絶の真似をしたと言ってくださいね。」
 しかしオリヴァは、ゲニミードの顔色が悪いのを見て、彼が本当に気絶したことを見抜き、この青年の気の弱さを妙だなと思いながらこう言った。「そうかい。もし真似するんなら、元気を出して一人前の男の真似をするんだな。」
 「そうしましょう。」ゲニミードは大まじめに言った。「しかしぼくは本当は女性であるべきだったんだ。」
 オリヴァはずいぶん長いこと2人のところにいたから、やっと弟の元に帰ってきたときには話すことがたくさんあった。オーランドゥが負傷したと聞いてゲニミードが気を失ったことはもちろん、美しい羊飼いの娘エリーナを好きになってしまったこと、初めてあったばかりなのにエリーナが彼の告白に好意を持って耳を傾けたことなどをオーランドゥに話したのだ。そしてオリヴァは弟に、もうほとんど決定したことのように、自分はエリーナと結婚するんだ、と話した。彼はこうも言った。自分はエリーナをとても愛しているんだ。だから羊飼いとしてここに住む。故郷の財産や家はオーランドゥに譲るつもりだ。
 「異議なしです。」オーランドゥは言った。「結婚式は明日にしましょう。私は公爵と友人がたを招待しますね。さあ、あの羊飼いさんのところへ行って承知させなさい。あの人今1人ですよ。あそこにあの人のお兄さんが来てますからね。」
 オリヴァはエリーナのところへ行った。ゲニミードが来たことをオーランドゥは気づいていたのだが、ゲニミードは負傷した友人に調子はどうだいと尋ねた。
 オーランドゥとゲニミードは、オリヴァとエリーナの間に突然芽生えた恋愛感情のことを話しだした。そのとき、オーランドゥはゲニミードに、あなたの美しい娘さんに、明日オリヴァと結婚してくれるよう頼んでくれ、と言った。そして、自分も同じ日にロザリンドと結婚できたらどれだけうれしいだろうなあ、と付け足した。
 ゲニミードはこの提案に大乗り気で、もしオーランドゥが口で言うようにロザリンドを本当に愛しているなら、その願いは叶うだろう、と言った。なぜかというと、明日になるとロザリンド本人が現れる、そしてロザリンドは喜んでオーランドゥと結婚するから、と請けあった。
 これは不思議なことに思えたが、ゲニミードがロザリンド嬢であるからには、ゲニミードには簡単に実行できることだった。だが口では魔術の助けを得て行うんだと言い、その魔法は有名な魔術師だったおじに習ったんだと話した。
 恋に甘くなったオーランドゥは、半信半疑で聞きながら、ゲニミードに本気で言っているのかと尋ねた。「命にかけて本当です。」とゲニミードは答えた。「ですから、晴れ着を着て、公爵とその友人たちに結婚式に来てもらいなさい。もし明日ロザリンドと結婚したいなら、彼女に来させますから。」
 翌朝、オリヴァはエリーナの承諾を得たので、2人は公爵の御前に出た。オーランドゥも2人に同席していた。
 一同がこの2人の結婚式を祝おうと集まってきた。だが花嫁がまだ1人しかいなかったので、不思議に思いいろんな推測が飛び交い、大方ゲニミードはオーランドゥをからかっているんだろうという結論になっていた。
 公爵は、不思議な方法で連れてこられるのが自分の娘だと聞き、オーランドゥに、その羊飼いは本当に約束を実行できるのかね、と尋ねた。そして、オーランドゥがどう考えてよいか分からないと答えていると、ゲニミードが入ってきて、公爵に、もし令嬢をつれてきたらオーランドゥとの結婚を承諾するかどうか尋ねた。「承諾するよ。」公爵は言った。「たとえ王国を娘に委譲することになったとしてもね。」
 それを聞いて、ゲニミードはオーランドゥに尋ねた。「もしぼくがここに彼女を連れてきたら、あなたは彼女と結婚すると言われるのですね。」「そうするよ。」オーランドゥは答えた。「もし私が多くの王国を治める王だったとしてもね。」
 そこで、ゲニミードとエリーナは連れだって出ていった。ゲニミードが男の服装を脱ぎ捨てて、もう一度彼女の着物を着ると、魔術の力もなしに、すぐロザリンドとなった。エリーナはいなかの服を自分自身の立派な着物に着替えると、なんの苦もなくシーリア嬢に変わった。
 2人がいない間、公爵はオーランドゥに、羊飼いのゲニミードが娘のロザリンドに似ているように思えると話した。オーランドゥも、そっくりに見えるんですと答えた。
 いったいどうなっていくのか心配するいとまもなく、ロザリンドとシーリアが自分の服を来て入ってきた。そして、自分がここに現れたのは魔法によるものだとは一言も言わずに、ロザリンドは父の前にひざまずいて祝福を求めた。ロザリンドが突然姿を現したことは、列席した人々にはとても不思議なことに見えた。まさに魔法だと思えた。しかしロザリンドは、父をからかうようなことはせず、自分が追放となったいきさつを話し、森の中で自分は羊飼いの少年、いとこのシーリアはその妹として住んでいたことを告白した。
 公爵はすでに結婚に対して与えた承諾を確認した。そしてオーランドゥとロザリンド、オリヴァとシーリアとが同時に結婚した。この結婚は、このような荒れ果てた森の中では、こんな状況につきものの華麗な盛儀では祝えなかったが、かつてなく幸せな結婚となった。
 一同がいい感じに涼しい木陰で鹿肉を食べていると、この善良な公爵と真実の恋人たちに完全な幸福を与えるかのごとく、予期せぬ使者が到着し、公爵にうれしい知らせを告げた。それは、公国が公爵に返還されたというものだった。
 あの横領者は、娘シーリアが家出したことに激怒し、また日ごとに立派な人々が、追放の身である正統な公爵の元へはせ参じようと、アーデンの森に向かうと聞いて、兄が逆境にあっても尊敬されているのをねたむあまり、大軍の先頭に立って、森めざして軍を進めた。兄を捕らえ、忠実な従者たちを刃にかけようと企てたのだ。
 ところが、摂理の神が不思議な介入を行い、よこしまな弟に邪悪な計画を思いとどまらせたのだ。というのは、彼が森の外れにさしかかったとき、1人の老僧(隠者であった)に出会い、その人といろいろ語り合い、ついに悪い計画をまったくやめてしまうに至ったのである。それ以来、彼は心から悔い改め、不正に手にいれた領地を放棄して、余生を修道院で送ろうと決心した。心からの悔い改めの第一歩として、兄に使者を派遣し、(前に述べたように)長い間横領していた公国を兄に返還し、兄の逆境時代に忠実に付き従ってきた人たちの領地と所領を返そうと申し出ることにしたのだ。
 この予期しなかった愉快な知らせは、まったくちょうどいいときに来たから、姫君たちの結婚式のお祭り気分や祝賀気分をいやが上にも盛り上げた。シーリアはロザリンドの父である公爵の身に起こった幸運にお祝いを述べて、ロザリンドの幸せを心から喜んだ。シーリア自身について言えば、父の公国返還によって、公国の後継者は自分ではなくロザリンドになったのであるが、2人の間にある愛情は純粋で、一点のねたみも羨望も混ざっていなかった。
 今や公爵は、追放中にともにいてくれた真の友人たちに報いる機会を得たのだ。付き従った人たちも、忍耐強く公爵と不幸な運命を共にした末に、平和と幸福に包まれながら、正統な公爵と共に宮殿に戻れることを大変喜んだのである。

[#注1]フランスとベルギーとにまたがるアルデンヌ(Ardennes)高原の森、ということに設定してある。
[#注2]ギリシア人が人類の歴史を金・銀・銅・鉄の4時代に分けた第1の時代。社会の進歩が最高潮に達して幸福と平和に満ちた時代。
[#注3]昔の迷信。
[#注4]新約聖書「ペテロの第一の手紙」から。
[#注5]神様のこと。出典は「ヨブ記」38章、「列王紀略上」17章などか。
[#注6]ここは、およそキリストの愛の教えが伝えられているところに住んだことがあるならば、ということ。
[#注7]通常10音節弱強格14行の詩。
[#注8]特定の人、物などに寄せる抒情詩。


【訳者あとがき】

まずはじめに、翻訳に関して、katoktさん枯葉さんに指摘を頂いたことを感謝します。

この作品は、シェイクスピア劇の中でも喜劇に属するものです。さすがに喜劇らしく、横領者であるフレドリック公が隠者と話し合うだけで簡単に計画をやめてしまったり、その娘シーリアが追放した相手の娘であるロザリンドととても仲がよかったりする点がなんだか浮世離れしているのですが、それでも読んでいて楽しかったりします。

女性の方が男に変装して、愛する男に「自分をその人に見立てて告白してくれたまえ。」というシチュエーションが喜劇らしくていいのですが、戯曲の台本を小説に書き直すという制約から、その部分がきれいさっぱりとれてしまっています。そのかわりに、そんなことが許されるような状況を巧みにつくっていく前段階が、いわばこの作品の肝になっています。

今まで訳した作品に較べれば、そんなに有名な作品ではないのかもしれません。でも、シェイクスピア劇を鑑賞する前段階として読んでいただければ幸いです。

ところで、次は何を訳しましょうか。といってももうとりかかっていまして、一部で期待されている(のか?)「ヴェニスの商人」の対訳本が手に入りまして、訳している最中なのです。まあぼちぼちとやっていきますよ。待っている間に今まで公開したものの添削でもしていただければありがたいのですが。

2001.06.04


原作:AS YOU LIKE IT(TALES FROM SHAKESPEARE)

原作者:Mary Lamb

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この版権表示を残すかぎりにおいて、商業利用を含む複製・再配布が自由に認められる。プロジェクト杉田玄白正式参加テキスト。

翻訳履歴:2001年6月4日,翻訳初アップ。

2001年6月7日、枯葉さんの指摘を反映。

2001年6月12日、プロジェクト杉田玄白正式参加に伴い正式版へ。

2001年7月6日、細かく体裁見直し。

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代表:sogo(sogo@e-freetext.net)


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