ハイ・ファンタジー(High Fantasy)
異世界ファンタジー
現実世界とはかかわりが薄い「空想・仮想の世界」を舞台とした作品。
主に「異世界だけで完結している物語」を指し、「現実世界の人物が異世界と現実世界を行ったり来たりする」タイプの物は含まれないことがある。
厳密に創り込まれた世界観を持つものを「ハード・ファンタジー」
世界観の創り込みが比較的軽易なものを「ライト・ファンタジー」
と区分することもある。
ハイファンタジーには以下のようなジャンルがあるとされる。
エピックファンタジー(Epic Fantasy)
叙事詩(歴史・神話・伝説・英雄の功業などを物語る長大な韻文)のように、
架空の民族・世界・歴史の流れを描いた物語。
歴史小説のような文体で物語られることが多い。
ヒロイックファンタジー(Heroic fantasy)
架空の世界における架空の英雄の活躍を描くもの。
英雄譚・年代記風に書かれる。
「剣と魔法(ソードアンドソーサリー Sword and Sorcery)」とも呼ばれる。
善悪の対立が明確で、魔王を勇者が倒す、といった(RPGっぽい)内容の物が多い。
異世界迷い込み(召喚)・次元送還・タイムトラベル
登場人物が「本来住む世界(現実世界)」とは違う場所に行くことによって起きる物語。
ここ数年来、主にライトノベルのジャンルで大いに流行している。(※2015/07/06現在)
※現実世界との繋がりが強い物は、ローファンタジーに分類されることもある。
※タイムトラベル物で、「時間旅行」に関わる「科学技術関連の要素」が重要な作品の場合、SFに分類されることも。
※タイムトラベル物は、「時間旅行」に関わる「歴史的な要素」が重要な作品の場合は、歴史ファンタジーに分類されるかも知れない。
ロー・ファンタジー(Low Fantasy)
現実世界のコミカルファンタジー
元々は英語圏で「コミカルな設定のファンタジー」を示すための造語だったが、現在ではかなり曖昧な語となっている。
強いて言うなら、現実世界を舞台とし、ファンタジー的な要素のある物語が展開する作品。
ローファンタジーを細分化すると以下のようになる……かもしれない。
エブリデイマジック(everyday magic)
日常の中に不思議な存在・人物が紛れ込むことによって起きる物語
(「星の国からやってきたプリンセスが魔法を使う」とか、「黒服のセールスマンが怪しげなアイテムやサービスを売り込む」とか……)
※紛れ込んだ不思議な存在・人物の「科学技術関連の要素」が強いものは、SFに分類されることも。
(「光の国の巨人がモンスターをやっつける」ものはSF。また「未来からやってきた猫型ロボットが出す不思議な道具によって事件が起こる」ようなのはどっちでもあるわけで)
歴史ファンタジー
歴史上の「事実」の中、或いは裏側で、架空の出来事が起きるもの。
例えば、「歴史上の人物が実は特殊な能力を持っていた」とか、「怪事件の裏に魑魅魍魎が存在した」とか。
「殿様が城を抜け出して町の悪人を成敗して回る」といったようなものは、時代劇の一種でもあるかもしれない。
※一頃はやった歴史IF物・架空戦記物(死んだとされる人物がもっと長生きしていたらとか、あの国が敗戦していなかったらとか)とかもここに別けて良いのかもしれないが、作品によってはSFに分類した方が良いのかも知れない。
※「現代(その時代から見れば未来)」の人物や要素がその時代にやってくる「タイムトラベル物」は、こちらと被るジャンルと言えなくもない。
異世界迷い込み・次元送還・タイムトラベル
登場人物が本来住む世界とは違う場所に行くことによって起きる物語のうち、異世界色が薄い物。
※異世界色が強い物は、ハイファンタジーに分類される。
※タイムトラベル物で、「時間旅行」に関わる「科学技術関連の要素」が重要な作品の場合、SFに分類されることも。
※タイムトラベル物は、「時間旅行」に関わる「歴史的な要素」が重要な作品の場合は、歴史ファンタジーに分類されるかも知れない。
SF
SF(サイエンスフィクション/サイエンスファンタジー)
Sはサイエンス(Science)じゃなくてスペース(Space)だって説があったり、実は「セーラー服(Sailor-Fuku)」の略だっていう説もまことしやかにささやかれている、実に多様な様相を見せるジャンル。
定義付けするなら「科学的な空想にもとづいた作品」
(スペースフィクションの場合は「宇宙を舞台とした作品」となるかな)
創作に際して「科学的な空想」の何処に重きを置いているかでジャンル分けができる……かも。
※ハードSF(ハードコアSF)
科学性に重きを置いた作品。
科学技術関連の正確な描写と、アイディアが重要となる。
今の科学で説明が付く、あるいは現在の科学を応用・拡張した技術や仮説を元にした理論・疑似科学で説明が付く世界を舞台とする。
科学技術関連の正確な描写と、科学技術的アイディアがあれば、舞台となる世界は未来や宇宙空間に限らない。
ただ、「科学的に正しい」部分を突き詰めると、相対性理論に反する亜空間航行や超光速ドライブは行えないため、太陽系外を舞台とすることは難しくなる(外宇宙を舞台とするなら、どのようにその場所へたどり着いたのかを「科学的に説明」する必要がある)ため、地球・太陽系内を舞台とする作品が多いような。
なお、執筆時点では「正しい」と考えられていることが、後の世に誤りとされる可能性があるため、読者として「古典的なハードSF」を楽しむときには注意が必要になる。
科学の中でも生命科学・バイオテクノロジーをネタとしている場合は、SFではなくて「理数系ホラー/バイオホラー」と称したり呼ばれたりする。
※スペースオペラ
「宇宙を舞台とした演劇」の意。
元々は、「石鹸(ソープ)メーカーがスポンサーのメロドラマ」であった「ソープオペラ」になぞらえて「質の悪いSFの蔑称」として命名された物。
そこに「西部劇(ホースオペラ)の舞台を宇宙に置き換えたような物」の意味合いも加味されたものらしい。
科学的な考証は二の次で、娯楽性を追求した作品。
現在の地球でない世界で繰り広げられる、世界西部劇や娯楽時代劇のような波瀾万丈の冒険活劇。
極端に言うと、正義のナイスガイなヒーローが宇宙海賊(あるいは悪の宇宙人だったりマッドサイエンティストだったり)と戦って綺麗なお嬢さんを助けたり、ビキニ水着にしか見えない宇宙服を着たヒロインが、悪のエロ宇宙人に攫われて危ない目に繰り返し遭ったりするような作品。
(そんなんばっかりじゃないけども、パルプマガジン全盛期にはそういうパルプフィクションが乱造されていたのは事実であって……)
基本的に、宇宙や未来世界など「現代(作品が執筆された時代)」よりも科学技術が進んでいる世界を舞台としているが、その「進んだ科学技術」の正確性には頓着がない物が多い。
よって、物理法則を無視した武器をぶっ放し、相対性理論に縛らることなく超光速宇宙船で銀河の果てまですっ飛ばすことが可能。
ただし、勢い余って「科学」の部分がまるっきり無くなってしまうことも……。
※モダンスペースオペラ
科学的に整合性の取れた世界観を持つ、娯楽要素の強い作品
ハードSFを『「事件に対して科学的に整合性のとれた解決を与える」ことに重きを置くエンターテインメント性の薄いジャンル』と定義した場合、それに対して「ウチのは堅っ苦しい作品じゃないよ、科学的に正しい上に凄く楽しいよ」という意味で「スペースオペラ」を自称したり、呼ばれたりする。
※スチームパンク(Steampunk)
産業革命華やかりし19世紀の科学水準がそのまんま発展し、自動車のエンジンのような内燃機関が発明されず、ダウンサイジングが難しい蒸気機関が普及し高度に発達した、「if世界」の物語。
ヴィクトリア朝のイギリスや西部開拓時代のアメリカ、またはそういう雰囲気の異世界を舞台とすることが多く、そのような中にSFやファンタジーの要素を組み込んでいる。
18〜19世紀の人々が思い描いていたであろう「レトロフューチャー」な時代錯誤的テクノロジーを登場させ、服装や芸術などの文化様式はヴィクトリア朝っぽい、という設定な事が多い。
飛行船が跳び、機関車が走り、歯車と発條とピストンが蒸気を吹き上げ、機械オイルの匂いを漂わせる世界観の作品。
※サイバーパンク
人体や頭脳を機械的に拡張することが普遍化し、サイボーグや仮想空間、電脳ネットワークなどが当たり前に存在する世界を描く。
無機質だったり、退廃的だったり、暴力的だったり、デストピアだったりする物が多い。
(ディストピア(Dystopia):アンチユートピアとも。平等と秩序を守るためと称して、基本的人権を無視した管理と統制によって個人の自由を制限した極端な全体主義をとる、架空の社会・都市)
その他のファンタジー
ハイファンタジー・ローファンタジーの両方にまたがるようなジャンル。
あるいはどちらにも別けようのない作品。
メルヘン/フェアリーテール(説話)
昔話、伝承、民話、お伽噺のような、空想的な物語。
多くは、妖精・妖怪(フェアリー)や鬼、あるいは不思議な力を持った人物が登場する。
グリム・アンデルセン・イソップ、日本昔話などのような作品。
ダーク・ファンタジー/ゴシック・ファンタジー
1.
怪奇色の濃い、不条理な世界観を持つ作品。
怪奇な出来事、猟奇的な事件、残酷な描写、アンハッピーエンドなど、暗くおどろおどろしい内容。
戦争、拷問、略奪、暴力(性暴力含む)、死など、人間世界の「闇」の部分が強く(場合によっては誇張されて)反映された世界観を持っている。
2.
ゴシックロマンス(18世紀末から19世紀初頭にかけて流行した神秘的、幻想的な小説)の流れを汲み、ホラーに近い作品。
・フランケンシュタインの怪物
・ドラキュラ
・ジキル博士とハイド氏
のような系統
架空戦記・歴史IF
「もしあの作戦が成功していたら」「もしあの人物が生きていたら」「もしあの時この兵器が完成していたら」など、史実では起こりえなかったことをシミュレート乃至想像する。
作中の「もし」が、実際に計画されていたが実行されなかったなどの「あり得たこと」であり、且つ歴史や技術の考証が性格であるものは、ハードSFの範疇に入るかも知れない。
逆に実際にあり得ない「もし」による歴史改編の場合は……スペオペやライトファンタジーの類と言えなくもない。
タイムスリップによる「もし」のものは、SFの範疇になるかもしれない。
(たとえば「戦国自衛隊(※原作小説の方)」はハードSFの類だとおもう)
パラレルワールド
SF的ギミック(仕掛け)の一つ。
なにがしかの原因により、ある世界(現実世界)から分岐した「同じ時間の流れの中で平行して存在する別の世界」のこと。
いわゆる「異世界」ではなく、あくまでも「こちらの世界」と同一の時間軸・次元を有している。
並行宇宙・並行世界・並行時空などと訳される。
タイムトラベル物では、トラベラーが原因で歴史が変わった場合、もといた世界とは違う世界が発生することによってタイムパラドックスを解決することがある。
(たとえば、大人トランクスの居た未来は、悟空が生きている歴史とは「別の世界」になるので、此方で人造人間達を倒したところで、未来のそれらが消えて無くなる訳ではないし、死んだ悟空や悟飯立ちが生き返る訳でもない。トランクスは此方の世界での経験をふまえて、彼の居た世界の人造人間達を倒すつもりで居る……的なアレ)
伝奇
奇を伝える、つまり「幻想的で現実にはありえないようなことを伝える」文章。
ようするに、漢語で「ファンタジー」のこと。
元々は、中国・唐代の文語小説のことで、超自然的な鬼神怪異の世界を描いた「フィクション」を指す。
それより昔の、化け物が出たり仙人が出たりする説話は、「神話・伝説・歴史」の記録メモ、つまりノンフィクションとしての扱いだった。
しかし、時代が下って「作者の想像力の賜物」として物語が作られるようになった、と言う次第。
日本で「伝奇」と言った場合、中国や日本といったアジア風の世界を舞台としたファンタジーを意味することが多いような気がする。
つまり、登場人物や世界観が西洋風だと「ファンタジー」と呼び、東洋風なら「伝奇」と呼ぶと言った案配。※あくまで筆者のイメージ。
「古文書」「呪われた一族」「奇習・因習」「秘密組織」「邪神」「妖怪」「超常現象」「超能力」みたいな物がギミックとして出てくる。※あくまで筆者のイメージ。
伝奇時代小説
→時代小説に忍術や妖術、超常バトルなどの要素を取り入れた奇想天外な物語。
伝奇ロマン
→SFマガジン元編集長・森優(南山宏)氏考案。
現代を舞台とした、SFサスペンス色・ファンタジー色が濃厚な物語。
更に細分化すると、
「伝奇バイオレンス」「伝奇SF」「SF伝奇ロマン」「伝奇ホラー」「伝奇ファンタジー(?)」「伝奇ミステリー、「伝奇サスペンス」「伝奇アクション」
とまあ、枚挙に暇が御座いません。