九地篇 第十一 − 【九地篇 第十一】読み下し文 【2】

たるも、之くところを知ることなし。三軍の衆を聚め、これを険に投ず。これ軍に将たるの事と謂うなり。九地の変、屈伸の利、人情の理、察せざるべからず。

およそ客たるの道は、深ければすなわち専らに、浅ければすなわち散ず。国を去り境を越えて師するものは絶地なり。四達するものは衢地なり。入ること深きものは重地なり。入ること浅きものは軽地なり。固を背にし隘を前にするものは囲地なり。徃くところなきものは死地なり。このゆえに散地にはわれまさにその志を一にせんとす。軽地にはわれまさにこれをして属せしめんとす。争地にはわれまさにその後うしろに趨かんとす。交地にはわれまさにその守りを謹まんとす。衢地にはわれまさにその結びを固くせんとす。重地にはわれまさにその食を継がんとす。圮地にはわれまさにその塗に進まんとす。囲地にはわれまさにその闕を塞がんとす。死地にはわれまさにこれに示すに活きざるをもってせんとす。ゆえに兵の情、囲まるればすなわち禦ぎ、已むを得ざればすなわち闘い、過ぐればすなわち従う。

このゆえに諸侯の謀を知らざる者は預め交わることあたわず。山林、険阻、沮沢の形を知らざる者は軍を行ることあたわず。郷導を用いざる者は地の利を得ることあたわず。四五の者、一を知らざるも覇王の兵にあらざるなり。それ覇王の兵、大国を伐てば、すなわちその衆聚まることを得ず。威、敵に加うれば、すなわちその交わり合うことを得ず。このゆえに天下の交わりを争わず、天下の権を養わず、己の私を信べ、威、敵に加わる。ゆえにその城は抜くべく、その国は隳るべし。無法の賞を施し、無政の令を懸け、三軍の衆を犯すこと一人を使うがごとし。これを犯すに事をもってし、告ぐるに言をもってすることなかれ。これを犯すに利をもってし、告ぐるに害をもってすることなかれ。これを亡地に投じてしかるのちに存し、これを死地に陥れて然る後に生く。それ衆は害に陥れて然る後によく勝敗をなす。

ゆえに兵をなすの事は、敵の意に順詳し、敵を一向に并せて、千里に将を殺すに在り。これを巧みによく事を成す者と謂うなり。このゆえに政挙ぐるの日、関を夷め符を折りて、その使を通ずることなく、 廊廟の上に獅ワし、もってその事を誅む。敵人開闔すれば必ず亟かにこれに入り、その愛するところを先にして微かにこれと期し、践墨して敵に随い、もって戦事を決す。

このゆえに始めは処女のごとく、敵人、戸を開き、後には脱兎のごとくにして、敵、拒ぐに及ばず。


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2019/06/15update

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