だ、戦をやる!」
「やらねぇって言ってたじゃねぇか!」
「あン時は、そういう策だった。でも、今はやる」
「無茶だ! 徳川の一万が負けたンだぞ! 俺達二人じゃ勝てねぇよ」
次郎太は四郎兵衛の胸ぐらを掴んで、泣いた。
「哥ぃは、逃げてもいい。負けは負けでも、討ち死には少ない方がいいしな」
四郎兵衛は青い顔で歯を鳴らしながら、必死の笑みを作った。
「ぬかせ。俺も武士だ。敵に背中は見せられねぇよ」
鼻水を流しながら、次郎太は辺りを見回し、棒切れを一つ拾った。
「挟み撃ちにされてるみてぇだ」
四郎兵衛が言うと、次郎太はうなずいた。
二人は背中合わせに身構えた。
四郎兵衛は鬨の声が聞こえた方を向き、次郎太は爆音が鳴った方を見た。
険しい山をの前後ろから、敵は、ほとんど同時に現れた。
その数は……二人だった。