ている、たった二人の人間を、俺は失いたくなかった。
それがたとえ、ただの炭の塊であったとしても。
物言わぬ、魂の抜け殻であったとしても。
だが。
燃える灰色の風が、俺の泣き言を聴いてくれる筈がない。
火砕流の第二波は、そこにあった物を全て吹き飛ばし、別の地面を造って行った。
ただ、俺だけが残された。
着ていたはずの物は全部、カスすら残らずに燃え尽きた。
佩(おび)ていたのであろう長剣も、鎧うていたのであろう胸当ても、融けて、原型を留めていない。
だのに。
俺は、生きていた。
両の掌に一つずつ、真紅の珠を握って、熱い灰の中で生きていた。
『主公よ…我が友よ…』
消えかかる意識の奥底で、俺は確かに二人の声を聞いた。
『我らの「魂」は、貴方と共に在ります。かつて、我ら自身が貴方と共に在ったと同様に、これからも…永劫に…』
気が付くと、俺は灰の原の中に、独り立っていた。
握っていた珠は消え、掌には紅い文様が刻まれていた。
両の手を重ね拱むと真円を描く、涙滴のような形の文様だった。
「友よ…。ミハエル=ドラゴン…ガブリエラ=フェニックスよ」
俺は両掌に語りかけた。
「まずは、山を降るとするか…」