った。
あっという間に花が咲き、あっという間に実がなった。
それがその豆、たくさんの豆。
夕べたらふく食べて、今朝たらふく食べてもまだ減らない。
なんて幸せな煎り豆だろう」
おかみさんたちはびっくりして訊ねました。
「その豆を食べておじいさんたちは若返ったんですか?」
旦那さんは首を振りました。
「食べる前から元気が出てね。食べる前から若返った気がしたよ」
「なるほどなるほど。それではきっと、おじいさんたちが普段から良い人だから、神サマが元気をお恵み下さったんでしょう」
おかみさんたちは合点して、大きくうなずきました。
すっかり若返って元気になった夫婦の話を聞いたおかみさんたちは、なんだか自分たちもすっかり元気になった気がしました。
つい先ほどまで明日のご飯を心配していたおかみさんたちは、白髪頭の旦那さんが持ってきた豆の粉を家族一人に一袋ずつ、軽々担いで持ち上げて、それぞれ家に持って帰りました。
みんなが明日の食事に必要なだけ粉の袋を持っていったので、旦那さんは毛玉牛に荷車を引かせて戻りました。
石の壁の小屋に着いて、残った袋を数えますと、粉が詰まって膨らんだ袋が百と七袋ありました。
入れ替わりに、白髪頭の若い奥さんは、豆の茎から取った糸百かせを荷車に積むと、毛玉牛にひかせて村の南の外れの刺草丘に持って行きました。
刺草丘にはたくさんの人たちが住んでいて、明日の仕事の心配をしていました。
何しろこの村は、村長さんよりも村一番の金持ち長者の方が威張っているくらい、ぜんぶのことを長者が取り仕切っております。長者が仕事の手配をしてくれなければ、明日からはどんな仕事もなくなってしまうのです。
刺草丘の井戸の端にはおかみさんたちが集まって、財布の底に残った銅貨でどうやって明日から暮らそうかと、口々に話し合っておりました。
「あら村の衆、こんばんは」
白髪頭の奥さんは、井戸の端に荷車を止めて、大きな声で言いました。
おかみさんたちおどろいて、お互いに顔を見合わせました。
「この村にこんな女の人がいたかしら?」
奥さんはにこにこ笑って言いました。
「ほぅらよくごらん、石の壁の小屋の婆ですよ」
おかみさんたちは女の人の顔をじっと見ました。確かに石の壁の小屋のおばあさんによく似ています。
「確かに石の壁の小屋のおばあさんによく似ているけれど、あのおばあさんはもっとずっとおばあさんですよ」
おかみさんたちは口々に言いました。とてもとても信じられないからです。
「わけを話すと長くなるわ。この豆の茎の糸を配るから、運びながらにでもきいてちょうだい」
娘のようなおばあさんの奥さんは、豆の茎の糸のかせを荷車から降ろしながら、神殿の合唱団のように節を付けて話しました。
「よぼよぼのじいさんとよぼよぼの婆さんが、朝一番にでかけた。
二人揃って杖を突いて、神殿まで歩いていった。
空っぽのお財布のそっこから、銅貨を一つ捧げた。
心を込めてお祈りしたら、天から御使いが降りてきて、
じいさんとばあさんに子供ができると仰った。
それから煎った豆を植えろと仰った。
酸っぱい上澄みで育てろと仰った。
言われたとおりに豆をまき、言われたとおりに上澄みをかけた。
すると不思議、煎り豆から芽が出た。
不思議不思議、あっという間に木になった。
あっという間に花が咲き、あっという間に実がなった。
それがその豆、たくさんの豆。
夕べたらふく食べて、今朝たらふく食べてもまだ減らない。
なんて幸せな煎り豆だろう」
おかみさんたちはびっくり