まで駆けた。
裏側に回って最初から、古い順に……でも今度は最初とは反対向きに……刻まれた文字を読んでゆく。
よくわからない年号が一体どれくらい昔のことなのかは解らない。
でも一歩横に動くと、墓石がほんの少しだけ新しくなるから、時代が少しずつ下がっていっているのだろうという想像はできる。
一歩ずつ蟹歩きする。彫り込まれた、その墓石の下に眠る人の死んだ日付が、だんだん今日の日付に近づいてくる。
最後から四番目の墓石には、大正という年号が入っていた。これは若くして亡くなった龍の祖父が生まれた時代だ。
行年七十と書いてあるから、この人は七十歳で亡くなったと言うことだろう。
次の墓石は昭和の最初の頃の年数が書いてある。年号の下には行年二十と書いてあった。
「若い人だ」
思わず墓石の前側をのぞき込んだ。
書かれていたのは男の人の名前だった。(龍にとっては運の良いことに、「寅」の文字は入っていなかった)
龍はそのままその次の墓石の前に彫られている名前を見た。女の人らしい名前があった。
首を引っ込めて、裏側を見る。前のとほんの数日しか違わない日付と、行年三十八という数字が彫り込まれていた。
その年齢は、龍の母親と大差がない。彼間無性に寂しくなった。
一番最後の墓石は、他のそれよりも一回り小さくて、ぐっと新しい感じがした。刻んである日付も、ぐっと今に近い。近すぎて気持ちが悪くなりそうだ。
「僕の生まれた年だ」