夏休みの前から夏休みの終わりまでの話。 − 【39】

が良いんだから。今までだって間違ったことなんか一回もなかったから』
 だから、大分恥ずかしくなった。
 そして、不安になった。
 自分の言ったことをころっと忘れてしまったなんて、また「トラ」に笑われるかもしれない。バカにされるかもしれない。
「僕、なんて言った?」
 恐る恐る、訊ねる。
 「トラ」の肩の揺れがぴたりとやんだ。少しだけ龍をバカにしているみたいだった笑顔も、すっと消えた。
 代わりに広がったのは、とても誠実で、とても真面目な、真剣の色だった。
「御札が消えたと言った。でも君は、何の御札が何処から消えたとは言わなかった。だから、解らないと答えるより他にない」


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2015/09/26update

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まろやか連載小説 1.41
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