夏休みの前から夏休みの終わりまでの話。 − 【45】

も、洪水は止まらなかった。
 しゃっくりみたいな嗚咽で肩を上下に痙攣させながら、龍は車を飛び降りて母親のお腹の当たりに抱きついた。
 店の奥から父親の怒鳴り声が聞こえ、それがだんだん近づいてくる。
 声は龍のものすごく近く魔できて、ぴたっと消えた。途端、龍のつむじの真ん中に、大きな拳骨の尖ったところが落っこちた。
 すぐ後に、柔らかくてひんやりした掌が、たんこぶ発芽寸前の頭を覆って、なでた。


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2015/10/05update

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まろやか連載小説 1.41
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