から、協丸は下がって見ておれ」
鎮の霊剣をすらりと抜いた。
協丸が数歩後ずさると桜女がよって来、袂から幾枚か呪符を取り出して彼に渡した。
「若様は弁丸の兄君なれど、離れて暮らしておられたから、弁丸の技量をご存知ないでしょ うが……」
「まあ、確かに。
ただ、言っていることはそこそこ信用できる男ではあるから、桜女殿と一緒なら『あや かし』を倒せるのであろうよ」
ニコリと笑った協丸を、弁丸がにらみつけた。どうも「信用できる」の前に「そこそこ」 というのが付いているのが気に食わないようだ。
それでも喰って掛らずにいるのは、すでに喰って掛っていられる状況ではなくなってい るからだろう。
朽木の枝が風に逆らってわさわさと揺らめき、濁酒色の芋虫の羽化したモノ共が一斉に 飛び立った。