ていた。
縮んで行くのである。
見えぬ手が、その掌で出来損ないのパン生地を丸める……そんな変化であった。
「あるいは、揺るぎない信念」
「信……ガッ……念?……ッグァ」
「大切なものを自分の命を懸けてでも守りたいと願う心。理不尽な出来事に決して屈服しない心」
縮み行く【剣の従者】を見下ろして、ガイアは静かに言う。
「栄達のために故郷を捨て、長年使えた主君を見捨て、友人の言葉に耳を貸そうともしない貴公は、残念だが、両方とも持ち合わせていないようだ」
「がぁっ!」
声なのか、音なのか、区別の付かない空気の震えを残し、フランソワ=ビロトーは消滅した。
床に、紅い珠が一つ落ちている。
ガイアはそれを拾い上げ、投げた。
金属製の鋭い音がして、珠は、レオンの持つ金細工の小さな孔の中に吸い込まれた。
「さて」
金細工を胸に止め、レオンは顔を【魔術師】の方へ向け直した。
「あなたに、お訊きしたいことがあります」
レオンは深紅の鎌を肩に担った。
【魔術師】の目玉らしきモノは、自分から離れてゆく刃の先を追い、動いている。
「皇弟フレキ殿下が、ミッドのクレール姫を保護しておられるそうですが、本当ですか?」
答えは返ってこない。
変わりに、粘膜に覆われた触手が、レオンの眉間めがけて勢いよく伸びた。
触手はレオンの頭があった場所を突き抜け、壁をぶち破った。
「お答えいただけないのですね」
レオンの声は、床近くから聞こえた。
しかし、【魔術師】は彼の姿を完全に見失い、再び見付けることができなかった。
湾曲した刃が、化け物の身体の真ん中を下から上へ通り過ぎていた。
そしてやはり、紅い珠だけが残った。