が咲いた」
老夫婦は手を取り合って歌い出し、豆の木の周りでぴょんぴょんとはね踊りました。
老夫婦はお互いの顔を見合わせました。つやつやでバラ色の顔をしています。
「なんと不思議なことだろう」
「なんと不思議なことでしょう」
老夫婦は互いのつやつやした頬を重ねるようにして抱きつきました。
「実がなるだろうか?」
おじいさんは……まるで働き盛りの元気な男の人のように、自分の奥さんを抱きしめていました。
「実がなりますよ」
おばあさんは……まるで働き盛りの元気な女の人のように、自分の旦那さんに抱きついていました。
夫婦はしばらく互いの顔をじっと見たあと、煎った豆から芽を出し育った豆の木のほうへ向き直りました。
咲いたばかりの豆の花でしたが、ちょっと目をはなしたすきに、花びらがしわしわに縮んでいました。
夫婦が見ていると花びらは枯れ落ち、小さな蕊《しべ》が顔を出しました。
「なんとまあ、実がなった、実がなった」
「煎った豆から、実がなった、実がなった」
夫婦は抱き合って踊りました。一跳ねする間に鞘が伸び、二跳ねする間に天を指し、三跳ねする間に膨らんで、四跳ねする間に頭を垂れ、五跳ねするころにはすっかり穫り入れ時になっていました。
「これは大変だ」
おじいさんは、慌てて農具置き場へ駆け込みました。
「これは忙しい」
おばあさんは、大急ぎで家の中へ駆け込みました。
おじいさんは小さな鎌と手斧を持ってきました。
おばあさんは大きなカゴと鉄鍋を持ってきました。
おじいさんは若い男の人のようにしゃきんと腰を伸ばして、たくさん実った空豆の鞘を、上から下まで順番に、一つ残らずつみ取りました。
おばあさんは若い娘のようにしゃきんと背筋を伸ばして、たくさん穫られた空豆の鞘から、右から左まで順番に、一つ残らず豆を取り出しました。
豆の鞘は、小さな鎌の刃がぼろぼろになるほどたくさん実っていました。
豆の粒は、大きなカゴから溢れ出すほどにたくさん詰まっていました。
「豆の木が枯れてしまったね」
おじいさんはちょっと寂しそうに言いました。
「豆の木は枯れてしまいましたね」
おばあさんはちょっと寂しそうに答えました。
「さあ退いておくれ。豆の木が倒れる前に切ってしまうよ」
おじいさんはそういうと、豆の木の根元を手斧で伐りました。
不思議な空豆の木の幹は、まるでデオドラ杉のように堅かったのですけれど、おじいさんが手斧を一振りするとみしりと震え、二振りするとぐらぐら揺れて、三振りすると傾きはじめ、四振りすると斜めになって、五振りしたならどすんと倒れてしまいました。
それからおじいさんは豆の木を五つに切り分けました。
一番太いところは薄く割って大きな板にしました。板は夫婦の家のテーブルや扉や屋根を全部修理してもまだ余るほど取れました。
次に太いところはきれいに削って角材にしました。角材は夫婦の牛小屋の柱や柵や格子を全部修理してもまだ余るほどたくさん取れました。
次に太いところは円く削って太い棒にしました。棒は家中の天秤棒やチーズのかき回し棒や物干し竿を全部新調してもまだ余るほどたくさん取れました。
次に太いところは、割って削って細い棒にシマした。細い棒は家中のスプーンやかぎ針や洋服かけを全部新調してもまだ余るほどたくさん取れました。
最後に余った細い枝は、短く切って薪にしました。薪は家中の暖炉やストーブで五年使ってもまだ余るほどにたくさん取れました。
地面にまるあるく残った切り株は、まるで立派なカマドのようでした。
おばあさんはそ