いことだが……自慢げに笑った。
「本当に、まるで手品でも見ているよう。……ところで、クレールさんは以前からルッカ・アイランドのパトリシア姫とご親交を深めていらしたのでしたね?」
「ええ」
エル・クレールのかすかな返事がお針子の人混みの奥からようやく聞こえたが、それ以上の言葉を出すことはどうやら無理のようだ。
代わりにブライトが、
「ルッカてぇと、舞踏神とかいうのを信心してる国だな。山奥の僻地な物だから、物理的に鎖国状態で、滅多に外交もできないトコだって聞いてるが……来てるのか?」
「ええ。今回の舞踏会にはクレールさんも参加すると伝えましたら、二つ返事で」
ギネビアは少々すまなそうに首をかしげ、お針子の腕の隙間を覗き込んだ。
「ですからどうしても、あなたには舞踏会に顔を出して頂かないとなりません。堪えてくださいな」
エル・クレールがするべきだった返事は、再びブライトの口から出た。
「全く政治家という奴は、手前ぇの都合で親友まで手駒に使いやがるか」
呆れてもいる。怒ってもいる。だが彼らは、同情し、承諾していた。