り当てた帳面の一葉とピエトロの顔とを交互に見て、
「殿下には遠路はるばるのご参勤でお疲れのことと存じます」
穏やかだが堅い笑みを浮かべた。しかし、ピエトロが何か言おうとすると、それを遮るように
「しかし、何分段取りという物もございますので、大変申し訳ありませんが、早速ギネビア様にご拝謁を」
早口で続けた。さらにピエトロが返答する間もなく、彼はさっさと謁見室へ向かって歩き出す。
ピエトロは慌てて彼の後を追った。
初老の男は、枯れ枝のような見た目からは想像もできないほど素早く軽快な足取りで、ホール正面の大階段を上った。
しっかり前を見て歩くための気力すら消耗しきっていたピエトロは、ついて行くのが精一杯。堅牢なドアの前で立ち止まったラムチョップの背中に危うくぶつかりそうになったほどだった。