するするすとんと喉の奥に落ちていった。「ふわぁあ!」 龍の口からは感動の声と、桃の甘い匂いがあふれ出た。 彼は矢継ぎ早にお皿の桃を口に運んだ。そうして、飲み込むたびに桃味の息を吐き出す。 お皿はあっという間に空っぽになった。 龍は果汁が弾く小さな光の反射を、名残惜しくじっと見つめて、言った。「僕は、嫌われっ子の方が好きだ」「ありがとう」 小さな声で「トラ」が言う。彼女は黒目がちな瞳を潤ませて、にっこりと笑っていた。