に軽いし、拘束されるどころか、逆に動きやすそうだ」
主税は自分の体を眺め、さすり、素直な感想を漏らすした。
白ずくめは小さくうなずいた。
「それでいて、丈夫で、刃も弾丸も通さない」
ざらついた声に、主税は顔を上げた。
白ずくめが先ほどまで刃を下に携えていた長柄物の切っ先が、彼の頭の上にあった。
「あっ!」
悲鳴を上げたのは、優とシロネンだった。
切っ先が、主税の赤い体を袈裟懸けに切り下ろした。
主税は微動だにしない。体に斬られた跡もない。
「テストにならないんじゃないかな」
刃が通った跡をなで、主税は白ずくめを見た。顔を覆う仮面で表情が漏れることはないが、白ずくめには彼が微笑んでいることが判ったらしい。
「良く、おわかりで」
白ずくめは再び刃の先を下に向けると、主税の前に跪いて頭を深く下げた。
優には何が起こったのか判らなかった。
恐る恐る主税に近づき、おずおずと彼の体に触れた。
「暖かいや」
ほっと笑顔を浮かべ、少年は主税に抱きついた。
「白い人に斬られたのに、怪我をしていないの? 黒い蟻のお化けみたいなのは、あの刀で…死んじゃったのに…?」
優はちらりと闇の奥を見た。
彼が「蟻のお化け」と評した正体不明の者たちが、ぴくりとも動かずに折り重なって倒れているのが、ぼんやりと見える。
「あれは、斬ろうと思わないと人を傷つけられないんじゃないかな。どういう理屈なのかはまるで判らないけれど、そう思ったんだ」
「非科学的だなぁ」
少年はそういって、白ずくめを見た。
「理屈で説明できないこともある。たとえばなぜ今になって彼らが動き出したのか。そしてなぜそれを止めるのが我々でなければならないのか」
今度は白ずくめが視線を動かす。その先にはシロネンがいた。
「彼女が説明してくれましょうが、おそらくは納得できないでしょう。何分にも、私にも納得できない破天荒な内容であるし、むしろするつもりもない」
シロネンの顔に不安と驚愕が満ちる。彼女は救いを求めるまなざしを主税に向けた。
主税は首を横に振った。
「もし君が、僕のことをアステカの神か、そうでなければ偉大な王様の生まれ変わりだとか、よみがえった悪魔と戦うことを宿命づけられた戦士の転生だとか、そんな風に説明しようと思っていて、だからこそ僕たちを襲った奴らやあそこで倒れている連中と戦わなければならなくて、そのためには他の仲間を捜し出す必要がある…みたいな話をするなら、僕も多分信じないだろうね」
そういいきった途端、彼の耳元でまた強い風の音が鳴った。
赤い光が彼の体から浮き上がり、今度は一カ所に集結してゆく。
主税の右の手首あたりに、それは集まり、再び赤い石の形となった。
先ほどと違うのは、その石を取り巻いていた枠がブレスレットへと変化して、彼の右手首に巻き付いていたことだった。
主税はその様を、さほど不思議だとは思わなかった。思わなかったが、思わなかったことを不思議だとは感じている。
周囲を見回す。
白ずくめの表情は、仮面の下で判らない。
シロネンを名乗る娘は、困惑しきりだ。
そして優は、主税にしがみつきつつ視線をシロネンに向けていた。
「シロネンさん、チカラの言ったみたいに説明しようと思っていた?」
彼はキラキラと輝く瞳で、シロネンを見つめた。彼女はおどおどしながら小さく頷く。
「すごい、すごいよ、チカラ! ものすごくかっこいい話だよ! チカラが、正義のスーパーヒーローなんだよ! それでボクはヒーローの無二の親友なんだ!」
途端、彼は天才学者どころか小学生以下