ンを通り抜けながら、体温を奪ってゆく。
彼の脳みその中で、たどり着いた場所……姫ヶ池は、緑色の呪いになっていた。
膝ががくがくと震える。龍は信号機の柱にすがりついたまま、ずるずるとその場にしゃがみ込んだ。
ゼブラゾーンの上に、巨大な黒い車輪が止まっているのが見える。
高い場所から、しわがれた大人の男の声が怒りを帯びて降り注ぐ。
頭を持ち上げた龍の鼻の穴からさらりとした鼻水が流れ出して、粉塵が積もったアスファルトの上に水玉模様を描いた。
緑がかった薄い黄土色が、彼の目の前でゆらゆらと滲みながら揺れていた。
その黄土色の、農協のマークと電話番号が書かれたドアが勢いよく開いて、やっぱり農協のマークの付いた緑がかった薄い黄土色の帽子がそこからぬっと突き出た。
皺のある白い顔が、優しく笑っていた。
「Yセンセエ……」
龍は自分の魂が頭のてっぺんからしみ出てしまったのではないかと思うくらい、体中から力が抜けてゆくのを感じた。