った訳か、瞳は濁り、淀む。
その眼に、赤い光が映り込んだ。
赫《あか》い紅玉髄《カーネリアン》の珠。
「それは……?」
「きっかけ、に、なりうる物……とでも申しましょうか。ご存じでしょう?」
エル・クレールの掌の上で、それは無機質に輝く。
「こちらの至宝、【ルイ=ワンの魂】。私どもは【吊された男《ハングドマン》】と呼んでおります。 もっとも、これは、レプリカですけれど。……本物は、司祭様の手中にある筈ですから」
新たな、そして決定的な物証を提示する検察官のように、彼女はそれを机の上に置いた。 そうして、微笑むのだ……総毛立つほどに冷ややかな、且つ熱い眼差しで。
「脆弱な心をそそのかす強い魂……。それが悪であると見抜けない間抜けと、独善を他人に押しつける愚か者とでは、どちらが悪いのでしょうね」