幻惑の【聖杯の三】 − 【10】

か? 何でまたいきなり、あんなに丸っこいうまそうな身体に……。待てよ、あの腹の出方は、まるで妊婦じゃないか!』
【あの方は、死せる魂をおのが胎に取り込んで、新たな命として産み落とそうとなさっている。悲しみも執着もない、新しい命として……。ですかが、あの方はまだ子を産むには早すぎます。どうか主公、あの方を止めて下さいませ】
 左手の剣が懇願する。
「要するに、まだアイツは本当に童女《ガキ》で、子供を産むどころか、血を流したこともない、って事かい」
 剣は、答えない。恥ずかしがる乙女のように黙り込んだ。
 ブライトはため息を吐いた。
「そう言うことなんだな。……しかし、止めろと言われても……」
 アーム【恋人達《ラヴァーズ》】で斬りつけてもどうやら無駄だというのは、先ほどの一撃で知れた。
『ハンターの武器も、オーガの牙も、喰われたグールどもも、今のアイツにしてみれば、等しく「死せる魂」って訳か。厄介だな』


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2014/09/26update

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まろやか連載小説 1.41
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