……そんな……はずが……。生きたまま……『アーム』の力を……発動……」
空気を揺らす2度目の爆発音がした。
地鳴りがする。
大地が揺れる。
熱風が吹く。
ルカの身体は、どろどろに融け、燃え上がり、灰になった。
『クレール』
呼ばわる声に、彼女は足下を見た。
赤く丸い石が、火山灰の中で輝いていた。
『クレール、我が娘よ』
拾い上げると、それはまばゆく光って、形を消した。
「……父上?」
左の腰が、暖かい。
正邪を量る天秤の形の紋章が、そこで赤く輝いている。
『我が名は【正義】。釣り合わぬ錘を糾す者。正しき者を守る者』
父の声はそれきり聞こえなくなった。
クレールは天を仰いだ。
「やっぱりクレールは母上のような、穏やかで、優しくて、おしとやかな女王には成れません。……父上の『本当の仇』を討って、囚われた母上を助け出すまでは……」
暗雲が蒼天を覆い尽くしてゆく。
「誰か、私に力を貸して」
灰色の雨が、彼女の頬を伝って落ちた。