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叔姪婚 は、おじまたはおばと姪または甥の結婚。異世代婚の一種。
ただし、日本では「姪男」を「甥」と呼んだりするなど親族呼称を別に言い回すことが多いため、紛らわしさを避けるため「叔父(伯父)と姪の結婚」「叔母(伯母)と甥の結婚」などと関係を具体的に表現することも多い。
ドイツをはじめとして合法な国も少なくないが、近親婚扱いされて許可されていない国も多い。
地域的状況
ヨーロッパ
古代ローマ帝国では、皇帝クラウディウスと姪の小アグリッピナが法律を変えて無理に結婚した例がある。
東ローマ帝国の皇帝ヘラクレイオスと姪のマルティナのように、周囲から非難を浴びながらも結婚した例もある。
南ドイツ発祥で神聖ローマ皇帝の家系やスペインの王家にもなったハプスブルク家はこのような婚姻を頻繁に行っていたことで知られ、例えば皇帝フェルディナント2世の両親(オーストリア大公カール2世とマリア・アンナ・フォン・バイエルン)は叔父と姪、スペイン王フェリペ3世の両親(スペイン王フェリペ2世とアナ・デ・アウストリア)は伯父と姪の関係である。
スペイン・ハプスブルク家の断絶は度重なる近親婚による遺伝的な疾患の発現が原因である可能性があるとする説があるが、ポルトガルやスペイン、南イタリアの王族の間ではハプスブルク家以前(アヴィシュ朝、トラスタマラ朝)にも以後(ブラガンサ朝、スペインと両シチリア王国のブルボン朝)にも叔姪婚がしばしば行われている。
ドイツでは、法律上は叔姪婚が認められている。
アドルフ・ヒトラーの姪であるゲリ・ラウバルが自殺したのは、ヒトラーが姪のゲリと愛人関係にあったにもかかわらず結婚しようとしなかったためだとする見方もある。
アジア
タイにおいては、このような婚姻も法律上認められている。
インドにおいては、一般的な場合に適用される婚姻法では原則としては禁止しているが、あくまで原則であり、実際には宗教や慣習上の問題がなければ可能とされている。
母親の介護で忙しく年齢を経ても未婚だった息子が、母親が92歳で死去した後、既に60歳となっていたが50歳の姪と結婚したという2008年のタミル・ナードゥ州での報道もある。
朝鮮では古代に新羅で骨品制の影響もあり、また高麗でもその伝統を受けて、王族でおばと甥、おじと姪が結婚する例が見られた。
中国でも古くは、前漢の恵帝や三国時代の呉の景帝が姪を皇后としていた例がある(いずれも姉の娘であり、同姓不婚の原則は守られている)。
日本
日本ではかつては普通に見られた慣習で、日本神話においては叔母と甥の関係であるタマヨリビメとウガヤフキアエズが結婚したことによって誕生した息子が後に初代天皇として即位し、神武天皇になったという伝説もある。
天皇家では政略上の問題から結婚させられたとみられる場合もあり、孝徳天皇と姪の間人皇女の婚姻例のように、不和が酷かったとされる事例もある。
天智天皇と天武天皇の時代には、天智の娘すなわち天武の姪が何人も叔父である天武の妻になったという記録がある。
奈良時代、藤原氏出身で皇后になった光明皇后は、夫である聖武天皇の母方の叔母に当たる存在であった。
平安時代も、朱雀天皇と煕子女王、円融天皇と尊子内親王のように叔父と姪の婚姻例が存在している。
摂関政治の頂点といえる藤原道長の時代には、天皇家の母方の一家が実権を握ったことで、後一条天皇や後朱雀天皇のように天皇が母方の叔母と結婚する現象が見られた。
だが、後一条天皇は叔母と結婚しているが、当時としては珍しい一夫一妻制を貫いた天皇として知られている。
戦国大名の伊達政宗の下で活躍した一門の家臣・伊達成実は、母親が父伊達実元の姪であったとされており、成人した実子はいなかったが、本人は亘理神社に祀られ崇められている。
大坂の陣で江戸幕府軍に敗北し処刑された長宗我部盛親も、姪を妻としていた。
明治時代に制定された民法では建前上は一応禁止したが、内縁関係の制限は設けなかったため、事実上は地域社会においては黙認された慣習として続いている。
倉本政雄による昭和17年度すなわち1942年度の富山県の産婦人科における調査によれば、調査対象となった1197人の婚姻例のうち2例すなわち約0.17%の婚姻が叔姪婚であったと、1943年に豐田文一との共同研究という形で報告をしている。
茨城県における叔父と姪の内縁関係で、叔父が死亡後の姪に対する遺族年金の給付が可能であるかを巡って訴訟が発生し、2007年3月には、そのような内縁関係でも倫理性などに問題がなければ遺族年金給付は可能という最高裁判所の判断が示された。
2009年1月には、兵庫県における叔父と姪の内縁関係の訴訟においても遺族年金給付を認める判決が東京地方裁判所で出されている。
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