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[文学論など]スランプ
作家名:夢野久作

夢野先生、締め切り打っ千切って逃走か!?

スランプに陥ったという作家先生が原稿依頼主の出版社に宛てた言い訳のお手紙。
作家は「スランプだ、ペンが一寸も動かない」といいながら「スランプに関する事だけはスラスラと書けるというのは何という皮肉」と頭を抱える。

底本である「夢野久作全集11」(筑摩書房)は 評論随筆を集めた巻であるということなので、コレはもしかして夢野先生の本音なのかも?
なお、文中「宛先」となっているぷろふいる社は実在した出版社で、1933年から1937年まで探偵小説専門誌「ぷろふいる」を発行していた。
(2015/10/10(Sat) 21:23)
[推理・探偵小説]ドグラ・マグラ
作家名:夢野久作

日本探偵小説三大奇書に数えられ、夢野久作の代表作とされる「小説」。
一応「探偵小説(幻魔怪奇探偵小説)」にジャンル分けされているが、その範疇には到底収まりきらない内容の怪作。
400字詰め原稿用紙で1200枚、文字数にして48万文字、htmlファイルの重さは1.25Mbという長編。
記憶喪失(逆行性健忘)で精神病院の独居閉鎖病棟に入院中の若者が一応の主人公で、基本的には彼の一人称によって物語は語り進められる。
青年の失われた記憶の中に、いくつかの奇怪な事件のとの関わり乃至ヒントがあり、物語が進むうちに事件の真犯人・動機・犯行手口などが明かされてゆく。
……の、だが、大筋の物語の間に奇怪な挿話、詩、論文などが入れ子にされた複雑な構成であり、ストーリーを要約するのは困難を極める。
以下、無理矢理ひねり出したあらすじ
記憶喪失の青年は「呉一朗」という名で、年は19歳だという。
しかし、青年本人にはその自覚がまったくない。
自分の病室の隣にはモヨ子(と名乗る入院患者)がいて、壁の向こうから必死に自分(彼女の従兄であり婚約者である「呉一朗」)を呼んでいる。
青年の担当医正木敬之博士は自殺し、その後を継いだという若林鏡太郎教授は青年に記憶を取り戻させようとする。
若林の指示で青年は正木博士の研究室にある資料を読むことに。

胎児は母胎内にいる10ヶ月の間に進化の過程を繰り返し、その遺伝子に刻み込まれた情報(先祖の記憶)を夢に見ているとする論文「胎児の夢」
人間は思考を体細胞で行っており、脳髄とは細胞の意識や感覚を反射交感する仲介機能を持つ電話交換機程度の物だ、とする講演の記録記事「脳髄は物を考えるところに非ず」
人間は総て大小にかかわらず精神に異常を持っており、その人間が棲み暮らす地球そのものが開放病棟なのだから、実際の精神病院にもそういった解放治療場を作るべきだとする正木博士の論文に関する新聞記事「地球表面は狂人の一大解放治療場」
ある青年が婚約者を殺害し、その死体を写生していたという奇怪な事件を報じる新聞の切り抜き「空前絶後の犯罪事件」
精神病院の患者に対する待遇の悪さ、精神病者に対する虐待と差別の実情を歌う「キチガイ地獄外道祭文」
唐代の画家「呉青秀」が狂気の末に妻を殺害し、その亡骸が朽ち逝く様子を写生し続けたという「絵巻物」
正木博士が自殺の動機(と総ての犯罪の根源にある思想)を記した「空前絶後の遺言書」
そして、精神疾患の青年が書いたという膨大な葉数の小説「ドグラ・マグラ」

こういった書簡を読み進めるうちに青年の精神はバランスを崩してゆく。

泣き叫ぶモヨ子の声を聞きながら、青年の魂は自分と「呉一朗」と「呉青秀」、そして生まれ落ちる前の「胎児」として、現実と夢想、過去と未来、自分自身と他者の間を彷徨うにいたる。
1935年(昭和10年)1月初版(松柏館書店刊、書き下ろし)
(2009/08/18(Tue) 16:32)
[文学論など]創作人物の名前について
作家名:夢野久作

奇想の小説家・夢野久作の創作論(?)
 探偵小説の中では、昔風に悪人と善人とを区別しなければならない場合が非常に多い。ズット昔(今でも歌舞伎なぞ)では悪人の人相が悪く、名前までも毒々しいが、この頃では……特に探偵小説の中では……人相の柔和な、美しい人物が思いもかけぬ大悪党だったり、札附の前科者が善人であったりしなければならない事が多いのだから、そんな感じの名前を最初から考えておく必要がある。衷心から気心の優しそうな名前の人間が、最後に手錠をかけられるような事を書くと、前にも述べたような理由で読者は何となくあざむかれたような不満を感ずるおそれがあるのだからそのヤヤコシイ事一通りでない。
いつの世のセンセイも、ネーミングには苦労なさっているようで。
(2008/07/14(Mon) 19:37)
[▼資料其の一▼]夢野久作
夢野 久作(ゆめの きゅうさく)
1889-01-04〜1936-03-11
本名 杉山 泰道(すぎやま たいどう)
福岡県福岡市出身。小説家、SF作家、探偵小説家、幻想文学作家。
夢あふれる子供向けのファンタジーから、猟奇的でホラー色の強いエログロまで、多数の作品を生み出したが、全般的に「奇妙」な空気が流れている気がする。
農園経営→出家して僧侶に→還俗して農園経営→謡曲教授→新聞記者→ルポライター・童話作家という経歴。
「香倶土 三鳥(かぐつちみどり)」「三鳥山人」「海若 藍平」「土原 耕作」「とだ けん」(以上、主に童話・児童向け文学)「杉山 萠圓」「萠圓山人」「かく見 鈍太郎」「夢野 久作」(推理・現像・怪奇もの)など、非常にたくさんのペンネームを持っいる。
代表作は「ドグラ・マグラ」(ということになるのだろうか)。
(2007/12/01(Sat) 16:15)
[その他小説]死後の恋
作家名:夢野久作
ジャンル:怪奇物(グロテスクな表現有り)

1918年、ロシア。
連合国のシベリア出兵により、諸国の兵隊達がウラジオストックに多数駐留していた頃のこと……。
一人の貧しい身なりをしたロシア人が、日本人将校に言った。
「私の運命を決定きめて下さい」
将校をレストランに引き込み、食事と酒を振る舞いながら、男は饒舌に語る。
己がモスクワ生まれで貴族の血を引いていること。白軍に参加していたこと。同郷で、リヤトニコフという十七、八歳の戦友がいて、親しくしていたこと。共に王朝文化を愛していたこと。
命がけの連絡斥候として出発する直前、リヤトニコフに別れを告げようとしたこと。その時の彼から目もくらむような宝石類を見せられたこと。それは彼がロシア革命直前に両親から送られたモノであること。
彼は革命の嵐から逃れて白軍の中に身を潜めていたが、ある日両親同胞が処刑されたことを知ったと告げられたこと。その直前、司令部で廃帝ニコラス二世とその家族が銃殺されたという噂を聞いていたこと。
リヤトニコフの運命に驚愕しつつ、彼の持つ宝石が欲しくて堪らなくなったこと。そのために彼の死を願い、斥候の一団に引き入れたこと。
行軍中に赤軍から銃撃を受けて負傷したこと。行き別れになったリヤトニコフの死体と彼の宝石を探して森をさまよったこと。
森の中で戦友達の惨殺死体を見つけたこと。その中に、若い乙女……リヤトニコフ……の陵辱された死体があったこと。
宝石類に興味を持たぬ赤軍が、それを持ち主の下腹部に撃ち込んだこと。
臓腑の中から宝石を取り出し、血も拭かぬままに持っていること……。

初出:「新青年」博文館   1928(昭和3)年10月
(2007/08/06(Mon) 13:29)
[児童文学・童話]犬の王様
作家名:夢野久作
ジャンル:童話

どれほど勧められても妃を娶らす、一匹の醜い犬を「息子」と呼んでかわいがる王様がいた。
病を得た王様は忠臣達に「息子を王に」と言い遺し崩御。
家臣達は摂政を立てた上で犬を王とした。
即位の儀式に集まった国民の中に、猫を連れた老婆がいた。
玉座にいた犬の王様はその猫を見るや玉座を飛び降り、吠えながら逃げる猫を追い、城から出て行ってしまった。
重臣達が慌てて追いかけると、犬は山奥の洞窟に入っていった。
洞窟の中には貴婦人と立派な若者がいて……。
初出:「九州日報」1922(大正11)年12月
(2007/08/06(Mon) 12:35)
[児童文学・童話]オシャベリ姫
かぐつちみどり(夢野久作)作の童話。
たいそう美しいが、生まれついてお喋りなお姫様「オシャベリ姫」
見た夢のハナシを本当のことのように話すので、お怒りになったお父様は姫をお城の石牢に閉じこめてしまいましした。
寂しい石牢の中で泣くウチに、姫はやがてうとうとと眠ってしまい……
初出: 「九州日報」1925(大正14)年9〜10月