60分は60本のろうそく


 お祭り広場の中心に、丸い花壇があります。円周には十二のめもりが付います。
 それは六十年前、国一番の時計職人・シグが造った、大きなからくり時計なのです。
 からくりは、決まった時間に動きます。
 日の出から夕焼けまでの間、一時間ごとに、その時間のめもりの所のふたが開き、中から妖精が現れて、ファンファーレを鳴らします。
 ただし、お昼の十二時には、全部のめもりのふたが開き、妖精の楽隊が現れて、カプリチッオを演奏します。
 それから、季節の変わる三月と六月と九月と十二月の一日の朝八時には、十二時のめもりの外側の飾りぶたが開き、妖精のバレリーナが現れて、ロンドにあわせて踊ります。
 また、大晦日の夜十一時には、十二時と三時と六時と九時のめもりの外側の飾りぶたが開き、妖精の楽団が現れてノクターンを奏でます。そして十二時を回って元旦になると、調べはオラトリオへと変わるのです。
 からくりが動く時間になると、たくさんの人が花壇の周囲に集まって見物します。
 からくりが引っ込むと、みんなは満足して、笑いながら帰って行きます。
 三時のめもりのふたが閉じ、みんなが帰った後のことです。
「それでね、シグじいさんの日記には、今日がそのからくりが動く日だ、とあったんだ」
 テラじいさんは、売店の屋根に、よっこらしょっと座りました。
 アースはじいさんの隣に座ると、落ちないように身を乗り出して、花壇を見ました。
 すると花壇は、十二時と六時を結ぶ線で二つに割れ、中から、愉快なスケルツォにのって、小さなサーカスが現れたのです。
 誰もいない広場の真ん中、からくり塔の天辺で、妖精の象使いが、素敵な歌を歌います。
「時計屋シグは言いました。六十年前の今日、生まれたばかりの孫のテラ。六十年後の今日、今の私と同じ歳。お誕生日おめでとう!」

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