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ここは【お姫様倶楽部Petit】の備忘録的リンク集【Petitの本棚】です

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[児童文学・童話]町のお姫さま
作家名:小川未明

「寂しいところ」が大好きだというお姫様。
どこでも良いから人のいないところで暮らしたいと言い出した。
人里離れた山奥までついて行った家臣達は退屈で仕方がないのだが、姫様ご本人は自慢の美声で歌ったり得意の楽器を奏でたりで、ちっとも寂しくないというからから困ったモノ。
ところがあるとき姫様は、自分より良い声で歌い、見事な腕前で琴を弾くその音を耳にする。
されど家臣達の耳には松風と鳥の囁きが聞こえるばかり。
しかし姫様は「ここはやかましくて仕方ない」と、今度は人家のない海辺へ住まいを移すことに。
家臣達はさらに退屈するのだが、そこでも姫様は歌い奏でてご満悦。
ところがある日
「毎晩星達が歌い鳴らすので、自分の音楽に身が入らない」
もっと寂しいところへ行きたいと言い出した。
辟易した知恵者の家臣は、姫様を賑やかな街へ連れ出した。
初めは驚いた姫様。でも、街では誰も姫様の音楽の「じゃま」をしないので、思う存分歌えると、自分の美声と名演奏を心に誇り、街で住み暮らしたのだとさ。
(2014/02/02(Sun) 18:43)
[児童文学・童話]お姫さまと乞食の女
作家名:小川未明

古く寂しい城に住むお姫様は生まれてこの方城から出たことがない。
お姫様は小鳥一羽を友として、城の奥で暮らしていたが、常々世間を見て見たいと思っていた。
ある時お城に物乞いの女が迷い込む。
お姫様はその姿のみすぼらしさを怪しむが、よくよく見れば自分と同じ年頃の美しい娘であった。
物乞いの娘の身の上話を聞くうちに、お姫様の世間への興味は増して行く。
ついには物乞いと入れ替わって城外へ旅立つことにした。
お姫様は外の世界で得意の歌や演奏を生かして、旅芸人のような自由気ままな生活を始める。
そのころお姫様の身代わりにさせられた物乞いの娘はお城で心細く暮らしていた。
お姫様の飼い鳥に自らの身の不自由さを重ね見た娘は、小鳥を空に放つ。
放たれた鳥は故郷の南の港町へ戻った。
その町でかのお姫様が望郷の唄を歌っていたのだ。
お姫様は小鳥に導かれるように故郷の城へ戻る。
ところが城の様子が少々違っている。
事情を心得ていた侍女は泣きながらお姫様に告げた。
お殿様から宴席で歌うように言われた娘は、その素養がないことを言うこともできず、ついに井戸に身を……。

初出:雑誌『童話』 1922年(大正11)4月
(2014/02/02(Sun) 16:37)
[文学論など]文章を作る人々の根本用意
作家名:小川未明

小川 未明 (おがわ みめい/びめい、1882年(明治15年)4月7日 - 1961年(昭和36年)5月11日)は、小説家・児童文学作家。
本名は小川 健作(おがわ けんさく)。
「日本のアンデルセン」「日本児童文学の父」と呼ばれる。(代表的作品は「赤い蝋燭と人魚」かな)
作品は清潔なものが多く、1916年(大正5年)に「遊蕩文学(人間の遊蕩生活に纏絡する事実と感情とに重きを置いて、人性の本能的方面に於ける放縦淫逸なる暗黒面を主題とし、好んで荒色耽酒の惑溺境を描出せんとするものby評論家・赤木桁平)」論争が起きた時、遊蕩を描かない小説家は夏目漱石と小川未明くらいだと言われた。

なお、短編作品を得意としていたが、童話作家・坪田譲治によれば「非常に短気な性格」だったとかで、未明の童話がほとんど短編なのは発表の場が雑誌だったことによるが、短気な性格によるところも大きい、とのこと。

そんな(作風が)真面目な未明先生の創作論。
 われ/\が、何か思うところ、感ずるところを書きたいと望むことがある。そこで、先ずわれ/\は、最初に自分の感じをき出す文字を、あれこれと選択しつゝ紙に書いてみる。それが自分の感じとぴったり合しつゝ書き進むるようならば、もう文章のある域まで達したのであるが、これと反対に思うところ感ずるところが、一字一行にも骨が折れてどうにも書き進められない場合がある。徒らに苦んだ果は、自分には所謂いわゆる文章が書けないのではないかと絶望したような心持にさえなる。
 もし諸君の内に、こういう場合にぶつかった人があれば、余はこう注意したい。
 まず筆をおいて、単に文章を書こうとしたのか、それとも本当に書きたい思いや心持があって書こうとしたのか、そのいずれかを静かに考え返してみるがいい。そしてもし心の内に、美しい文字や流行の文句を使ってみたいから書こうとしたのだと心づいたら、それは一行の文章を成さなかったのが至当あたりまえなのである。その人はそういう文章を作ろうとしたことに対して、まずじることを悟らねばならない。
(2012/10/03(Wed) 19:03)
[児童文学・童話]赤い姫と黒い皇子
作家名:小川未明

ある国に赤い服をまとった美しい姫「赤い姫」がいた。
隣国の皇子から求婚された姫は、皇子の人となりを探ろうと家臣を送り込む。
姫を娶りたい皇子は家臣を盛大に饗す。帰国した家臣は姫に「立派な皇子で国も豊か」と報告する。
慎重な姫は別の家臣に乞食の形をさせて隣国へ紛れ込ませる。
人々の噂を聞き集めた家臣は、姫に「皇子は外出時には、黒尽くめの装束に、黒のメガネ、黒い馬車に乗る」と報告する。
少々気味悪く思った姫は、黒塗りの馬車に乗った黒い皇子の幻を見るようになる。
黒い皇子に嫁ぐことを決断した姫。しかし、ことごとく予言を当てるという老婆に「皇子と結婚すれば、国に疫病が流行る」と言われる。
国を思う姫は家臣たちの勧めを受け入れて、遠い島へ逃げ出し、身を隠すことにする。
沖へと漕ぎだす船は、やがて静かに沈み始める。
陸で船を見送っていた人々は、姫の赤い服が海を染める幻を見る。
姫が来ないことを案じた黒い皇子は、姫を追って馬車を走らせる。
夜が明けると、黒い皇子の姿も消えていた。
夕焼けの美しい晩方、海の上に雷がなり、馬車が駆けるようにして黒雲が海の彼方に流れてゆく。
人々は、皇子が姫を追ってゆくさまだと信じている。
(2012/10/03(Wed) 17:33)